

発想力と豊富な経験で、AI導入をサポート株式会社S・A・P [ 大分県大分市 ]
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ハードウェアやソフトウェアなどの設計・製作のほか、工場や発電所などでの遠隔管理システムを数多く手掛けてきました。IoTデータキャッチアップ機器の設計・制作も得意とし、近年はAI活用にも力を入れています。2025年度より、食品産業企業会に協力会員として参加。これまでの経験や実績を元に、人手不足や高齢化、業務の引き継ぎに役立つシステムやAIの導入支援をしていきたいと考えています。

代表取締役 齋藤 徹さん
柔軟な発想から生まれるアイデアで、問題を解決
遠隔監視システムの構想が始まったのは、代表の齋藤さんがサラリーマンだった1980年代前半。半導体関連の大きな工場の設備などを担当していたのですが、設備に不具合やトラブルがあると、現地にまで出向いて対応をしなければなりません。2階や3階建ての工場も多く、移動だけで時間も労力もかかります。そこで考えたのが、「事務所にいるままで、トラブルの確認ができないか」という、遠隔監視のアイデアでした。
しかし上司には「必要ない」と言われてしまいます。それもそのはず、当時はデジタルカメラもなく、インターネットも普及していません。リモートや遠隔での監視など、想像できなくて当然です。しかし齋藤さんには「実現できる」という自信がありました。「電話があれば電話線が繋がっている。声は送れて、映像が送れないわけがない。ファクシミリも、文字をドット分解して送っているわけですから」。アイデアを実現するために会社を辞め、独立しました。

パソコンやメールも一般化していない時代に、遠隔監視システムを発想した齋藤さん。「人からは変わり者と言われますけどね」と笑いますが、これまでも柔軟な発想やアイデアを実現してきました
ただ、当時は今のように安いカメラもありません。実現のための費用はあまりに高額で、実現には少し時間がかかりました。
問題に合わせて、オーダーメイドでシステムを設計
その後カメラもデジタル化し、インターネットもWi-Fiも当たり前に。
2005年に『S・A・P』を創業すると、すぐに大手半導体メーカーとの取引が始まります。大規模工場向けに、設備の傍に人がいなくてもリアルタイムで複数台の設備の監視ができるシステムを多数、設計・施工してきました。システムはすべてオーダーメイド。それぞれの工場や作業、管理などの課題に合わせて、1から設計していきます。
監視システムを設置することで、ログ(処理や操作の記録)も保存することができるため、それらのデータを使った解析も可能に。省人化、生産性の向上につながるだけでなく、故障予知までできるようになります。

『S・A・P』のエンジニアは3名。それぞれの得意分野を生かしながら、各方面からの相談、オーダーに応えています

これまでに、食品工場などでも必要になる温度や湿度の管理システムなども手がけてきました
“職人技”を、遠隔管理システムでサポート
数年前からは、大分県から委託を受け県内中小製造業者のIoT導入を支援する「おおいたスマートものづくり応援隊」に着任。県内の酒造では、もろみの醸造をする際の温度管理をクラウドできるようにし、家や事務所からの温度管理を可能に。「もろみ醸造の数日間は家に帰れない」という悩みを解決しました。醸造に関わる酵母は、生き物。「生き物はどう変化するかわからない」という、食品会社ならではの問題に正面から向き合い、解決方法を探ったそうです。
遠く東北でも、“職人技”を遠隔監視でサポート。山形県の「炭焼き」では、炭を焼く期間は数日間、寝ずの番で窯の温度を管理していたそうですが、ガスの分析をし、窯に自動開閉する扉を設置。遠隔で温度の管理、調整ができるようにしました。その窯では、今でも高品質の備長炭を作り続けているそうです。
宮城県では、藍染めの“藍”の液を保存する壺の温度管理に、遠隔操作と自動制御のシステムを設計、施工。発酵する液体の非常に難しい温度管理が、スマホでできるようになりました。遠隔管理や自動制御が可能になれば、「子育て世代でも、職人仕事に従事しやすくなる」と、齋藤さん。費用はかかりますが、補助金を活用できることも多いそうです。

「従業員の少ない中小企業にシステムを導入することで、従業員の働きやすさや安全確保もできるようになれば」と、齋藤さん
工場内の安全を見守る『コロ番犬』
転倒監視ユニット『コロ番犬』は、1人で勤務する工場での安全確保のために設計しました。作業中の人が装着する発信機で、作業中に倒れるなど異常を感知すると、人のいる事務所のパトライトやブザーが作動するほか、指定送信先にメールも届くようになっています。「何かがあったときにすぐに救急車を呼べる。発見や連絡が数分遅れるだけで、救命率が大きく変わってきますから」と、齋藤さん。半導体メーカーの要望で生まれた商品ですが、「食品企業でも役に立つのでは」と、期待を寄せています。

工場での“万が一”の事故などに備える、『コロ番犬』を商品化。販売だけでなく、レンタルにも対応しています
会社や工場の“困りごと”を、AIに任せてみませんか?
そして、近年力を入れているのがAIの活用。「AIを導入することで、工場などの事故も防げるようになる」と、齋藤さん。高齢化や人材不足に対応するため、これまでは職人や従業員の知識や経験に頼っていたことを、AIに肩代わりしてもらうことも可能になります。
ただしAIは、「導入したい」と思ってもすぐに使えるようになるわけではありません。情報をきちんと精査し、その工場や事業所にあった最適な答えを出すためにも、これまでのデータは欠かせません。そのためのデータ収集や、分析の方法などもアドバイスしてもらえるそう。データの収集から学習までを考えると、最低でも3〜4ヶ月の準備期間が必要だそうです。

「AIには、最低でも2000から4000データを学習させる必要があります。ディープラーニングをさせなければ、ただの箱になってしまうんですよ」と、齋藤さん。
必要なデータを揃え、きちんと学習したAIは、食品工場でも大きな力を発揮します。例えば、漬物の場合。「○月○日、○時○分は、湿度65%、気温は27度。その時の塩分は○%。その後の出来(味)はこうだった」などのデータをきちんと積み上げていけば、「今日の塩分量は○%」など、AIがしっかりと答えを出してくれるので、経験のない人でも間違いのない作業が可能になります。
地元企業や工場の、AI導入の助けになりたい
これまで、大手半導体企業の遠隔監視などで実績を重ねてきた『S・A・P』。「大手と関わることで、企業としてスキルのボトムアップをさせてもらった。このスキルを、地元大分県の食品企業さんでも活用してもらえれば」と、食品企業会の協力会員になりました。AIに注目が集まる今、「『導入したいけど、そのきっかけや方法がわからない』という、工場や事業所さんは多いと思うんです。私たちが、その一助になれれば」と、齋藤さん。“困りごと”があれば、まずは相談してみると良さそうです。

遠隔監視システムや、IoTの分野で豊富な経験がある『S・A・P』。近年はAIの分野にも力を入れています
株式会社S・A・P
PROFILE
- 代表取締役
- 斉藤 徹
- 事業内容
- 稼働、温湿度、エネルギー等の監視システムや、LTEを使用した遠隔監視を設計・製作・販売
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