閉じる
メルマガだけのお得な情報満載!大分の食にまつわる旬な情報をいち早くお届けします。たすきのメルマガ。無料会員登録はこちら。

有限会社大倉菓機

個別相談依頼は
こちら
大倉菓機 大倉菓機

「おいしい」を技術と機材で支える有限会社大倉菓機 [ 大分県別府市 ]

  • カテゴリ
  • その他食品関連事業

製菓・製パン機械を取り扱い続け、110年以上。今では自社製造するオリジナル機械から、食品加工機械、厨房機器、冷凍設備や、店舗・工場のレイアウト、まで、幅広く対応しています。現在の社屋には、機械を製作・修理する工場だけでなく、テストキッチンも併設。菓子組合などの勉強会も開催されています。最近は、「ロータリーどら焼き機」などオリジナルの菓子製造機も開発。自社工場を持ち、あらゆる要望に応えてきた実績と手厚いアフターフォローが、県内はもちろん、県外の顧客からも多くの信頼を得ています。

この記事をシェアする

明治44年。別府駅の開設と同じ年に創業

明治末期の1911年。別府駅ができたその年、駅からすぐの場所で、煎餅型などを製造する『大倉菓子型製作所』として創業しました。

古くから別府は、全国的に知られる温泉観光地。鉄道も敷かれ、賑わいに溢れていた当時の温泉地土産の定番は、お煎餅でした。別府で主流だったのは、小麦、卵、砂糖を原料とした、いわゆる「鶏卵せんべい」。別府市内だけでも、3040軒の煎餅屋があったといいます。「当時は冷蔵庫もありません。クッキーなどの洋菓子も一般的ではない時代。日持ちするお菓子といったらお煎餅だったんですよね」と、5代目社長の大倉崇史さん。

創業後しばらくすると、工場の傍に『大倉万国堂』を併設。自社で作った煎餅型を使い、オリジナル煎餅の製造・販売も始めました。別府の名所をデザインした丸い形の「別府遊覧地図煎餅」は、大正10年の『第四回全国菓子飴第博覧会』で二等賞の銀杯を受賞しています。

大正時代ごろに使われていた「別府遊覧地図煎餅」の型と、この煎餅で受賞した銀杯の賞状

丸い煎餅型には、別府地図に名所や温泉地が細かく描かれている

煎餅型から、独自の煎餅焼き機製造へ

創業当時、饅頭の型は鋳物、煎餅の型も鉄板を叩いて作っていました。「昔は小さい高炉で鉄を溶かして、それを砂で固めた鋳型の中に流して。10人ほどの工員さんが住み込みで働いていたそうです」と、社長。当時の納品先は、長崎の雲仙や小浜温泉など県外の温泉街も多く、作った機械や部品を三輪バイクに積んで、山中で1泊しながら納品していたとか。「今では、九州ではお煎餅の機械を扱うのは弊社1社だけ。元々少なかったんでしょうね」。

1967(昭和42)年には、現在の社屋がある場所に工場が移転します。この頃は、自動で焼ける煎餅機が主流に。お店から要望を聞き、オリジナルの機器も自社開発していました。

駅前は手狭になったため、昭和42(1967)年に現在の場所に工場を新設した

新工場の前に並ぶ当時の社員の皆さん。この頃は社員寮もあったそう

昭和40年代はまだ煎餅焼き機が主流だった。訪問者に自社の焼き機を説明しているのは、崇史社長のおじいさんであり、3代目社長の重利さん

ものづくりに工場は欠かせない

「前の社屋には、鍛冶屋さんみたいな“火造り場”があったんですよ」と教えてくれたのは、崇史社長の父親で前社長、現在は会長の一泰さん。2018年に完成した新社屋に“火造り場”はありませんが、今でも工場が完備されています。

現在は、菓子型だけでなく、製菓製パン機械や食品加工機械、厨房機器、冷凍設備、や、工場や、店舗レイアウトまで幅広く対応。顧客は、100年以上の付き合いがある老舗和菓子店から菓子工場、個人経営の洋菓子やパン屋、カフェまで、実にさまざまです。

全てをワンストップで提案ができるのが、うちの強みでもあると思います。自社製造の機械だけでなく、それぞれの工場やお店に合わせた機械や機器の導入からレイアウト、エアコンなどの設備関係も一緒に提案したり。建築会社さんと一緒に、食品の冷凍工場を作ったりもします」と、社長。

「『ものを作っていく』というところから起業していますから。工場は必ず必要なんです。大変ですけどね、絶対に続けて行かなければと思っています」と、一泰会長

鋳物の菓子型を作っていた時代から変わらない、『大倉菓機』の屋台骨ともいえる工場。ここで多くのオーダーメイド機器が誕生した

昔からのやり方を活かし、店の味を守る

工場では、「既製品だと思ったような焼き上がりにならない」という和菓子店からオーダーがあった、どら焼きの皮用の焼き台の製作最中でした。焼き台は銅板。「銅板だと、焼き上がりが全然違うと思います。銅板を使ってピカッとしたお菓子を焼くのが、和菓子屋さんにとっては当たり前のことですもんね」と、社員の薮内さん。社長も「うちは昔から、ずっと使われてきた道具や理にかなったやり方を生かしていくことを一番に考えています」と、力を込めます。

工場は修理でも大活躍。「メーカーに部品がないものは作ることもありますね」と社長。最近は外国製のコーヒーマシンの修理依頼も多いそうで、「うちでは全て分解して修理するので、もしかしたらメーカーさんより詳しくなっているかもしれませんね」。

オーダーメイドの機器開発の実績から、食品加工機械の開発に取り組むことも。『くにみ農産加工』からの依頼で、バジルの選別装置を開発しました。この機械には、お餅をカットする装置の仕組みや経験が生きたといいます。

 

「お客様の生地によって、加工を変えています」と、旋盤なども担当する佐藤さん

電気の設計から配線、機械の修理、納品、自社のポスターやホームページも以前手がけた、薮内さん

どら焼き機や豆の焙煎機も開発

近年オリジナルで開発したのが、「ロータリーどら焼き機」。銅板に生地を落とし、回転しながらじっくり皮を焼き上げ、あんこも載せることができます。省スペースで、未経験者でも扱うことができる優れもの。職人の手と同じような焼き上がりを目指し、改良を重ねて完成させました。

そのまま和菓子店で導入できるようにサイズも取り揃えているのですが、お店それぞれの要望を聞くうち「毎回特注になることが多いですね」と、笑う社長。薮内さんも、「極力、元の商品に近づけるように考えています」。機械の限界を作らない。これこそが、『大倉菓機』の信頼される所以なのです。

近年は、原材料高騰や人手不足が製菓製パン店・食品工場の悩みの種に。そこで、「これまで人の手で行っていた作業を機械化したい、生産量を増やしたい、変えたい」などの要望にも応えられるようにと、豆を自家焙煎できる「焙煎機」を開発しました。2つのオリジナル機械は、20252月に開催されるモバックショウ(国際製パン製菓関連産業展)にも出品予定です。

省スペースで、手焼きより3倍ほど効率が上がる「ロータリーどら焼機」は、洗うなどの掃除も簡単

「エアのコンプレッサーを繋ぐと銅板の上にシリンダーから生地が押し出され、弱火で焼いていきます」

テストキッチンでは菓子などの勉強会も

工場ともう一つ、重要な役割を果たしているのがテストキッチンを兼ねた、機器のショールーム。オリジナル機器も設置しているため、いつも使っている生地を持ち込んで試作することもできます。

ショールームには、煎餅焼き機やどら焼き機など大型の機械から、和洋菓子の型や口金までずらりと並ぶ

経験を買われ、新商品開発の相談も舞い込みます。今年は、創業350年を超える県外の老舗和菓子店から相談を受け、初めて挑戦するワッフル生地の焼成機に加え、そのレシピ開発も手伝いました。歴史が長い和菓子店などには、古い資料なども参考に、昔ながらの生地の配合から探っていくといいます。そんなレシピ開発に活躍するのが、関連企業のパン店社長を務める、弟の康弘さん。パン屋での経験も踏まえながら、生地の配合、焼き機に落とす量、焼成時間のベストを探っていきます。「うちはね、会長も器用なんです。お菓子のレシピの考案もしていたんですよ」と社長。

最近では水産会社などからの依頼も増えてきました。テストキッチンにある煎餅焼き機でエビやしらすを焼くこともあるそうです。

ドイツ製のスチームコンベクションなども揃うテストキッチン。ここで製菓製パン関連の勉強会が開かれることも

社長の弟、康弘さん。根っからの器用さで、機械の修理から溶接、お菓子のレシピ開発まで幅広く担当している

敢えて合理化せず、顧客の要望に応える

「『商売は合理的にせんと儲からんぞ』って、みなさんおっしゃるんですよ。もちろん、機械部門を辞めるとか、合理化して業務や取り扱うものをスリムにすれば、利益は残ると思うんですよ。でも、うちはとっと(まったく)真逆でね」と、会長。

現在も工場で、大きな菓子店や小さな老舗などそれぞれの店が求めるものに合わせ、使いやすくおいしいお菓子やパンを作る機械を真摯に作り上げています。「儲からんからって、いろんな所を削るわけにはいきません。必要な事は一生懸命続けようって、いつも言っているんですよ」。そんな会長の言葉に、すぐに修理に駆けつけてくれる姿勢に、新商品開発の相談にのってくれる幅広い対応力に、信頼が集まるのは当然のこと。お客様のため、おいしい菓子やパンのため、令和の今も変わらず真摯な商いを続けています。

 

自社開発の機械や顧客のためのオーダーメイド機器、さらには修理まで、幅広く対応できるのは自社工場があるから

古い部品や加工の道具入った、年代もののパーツキャビネット。「40年、50年前に納品した機械が壊れたときのために、当時の部品を残しているんです」と崇史社長

機械製造から修理などアフターケア、納品、営業、レシピ開発など、さまざまな依頼に全力で対応する少数精鋭の社員の皆さん(残念ながら、営業の山本さんは外出中だった)

有限会社大倉菓機

PROFILE

設立年月
1911年
代表取締役
大倉 崇史
事業内容
食品機械、製菓・製パン機械、機器の製造、販売、修理メンテナンス 等

CONTACT

住所
大分県別府市船小路町2-39
TEL
0977-21-6363
FAX
0977-21-7878
HP
http://www.okurakaki.com/

この記事をシェアする