

産業廃棄物を肥料に変えて、 リサイクルループを実現するダイナン株式会社 [ 大分県大分市 ]
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事業活動で生じた廃棄物処理の問題は、経営課題のひとつとして挙げる事業者も少なくありません。そんな廃棄物を資源として回収し、肥料や飼料へ生まれ変わらせる「リサイクルループ」を実現している『ダイナン株式会社』は、県内事業者の環境経営を支える大切な役割を果たしています。

代表取締役 秦 仁視さん
畜産業からはじまった、ダイナンの歴史
産業廃棄物の回収から処理、リサイクル品製造まで一貫して請け負っている『ダイナン株式会社』。その事業の特徴は、単に処理をするだけではないということです。回収された廃棄物の多くを良質な農作物や家畜のえさとして堆肥や飼料へと、価値あるものに生まれ変わらせています。持続可能な社会の実現に向けて、理想的ともいえる“リサイクルループ(廃棄物をリサイクルし、再び生産プロセスや消費プロセスに戻す循環型社会のモデル)”を実践しているのです。

産業廃棄物を適切に処理し、堆肥化することで、環境負荷を軽減する「循環型農業」を実現
“産業廃棄物は大切な循環資源である”という同社の考え方は、畜産業からスタートした歴史があるからこその視点かもしれません。「実は昔、祖父と父が養豚業を営んでいたのですが、経営が伸び悩んできたのをきっかけに、堆肥事業にシフトすることを考えはじめたんです」とは、代表取締役の秦仁視さん。当時から、畜産の現場で発生する糞尿や木くずなどを自分たちで堆肥化し、有効な資源として活用していたのだそうです。
時代の流れとともに、産業廃棄物処理の問題は社会課題としての意識が高まり、法整備も促進。処理に苦慮する事業者も増加していきました。そんな中、畜産業が厳しい状況になったことも重なり、これまで培ってきた堆肥化の独自ノウハウをいかして、思い切って事業を転換しました。

畜産業と同時に取り組んできた堆肥製造の技術を、社会課題解決につなげています
県内最大級の堆肥化処理施設を保有し、多様な廃棄物を受け入れ
堆肥がつくられているのは、大分県内最大規級の堆肥化(コンポスト化)処理施設。1日あたり65トンもの廃棄物の受け入れが可能です。事業者にとって、廃棄物はいち早く処理をしたいし、かかる費用はできるだけおさえたいもの。そこで同社では、依頼から最短かつ安価で回収できるようにと、主に大分県内の事業者にしぼって受け入れを行っているそうです。

大分市郊外にある堆肥化処理施設は、常時廃棄物の受け入れを可能にする規模を誇る
産業廃棄物を堆肥として生まれ変わらせることができる理由は、受け入れる廃棄物を限定しているからです。とはいえ、汚泥、動植物性残さ、家畜の糞尿、廃油をはじめ、木くずや紙くず、廃酸(賞味期限切れのジュースなど)と、さまざまなものを受け入れています。
期限切れ商品などを廃棄する際、容器と中身を分別すれば一般的には処理費は下がりますが、分別のために選任の人材を使う余裕がないためか、そのままの状態で処理を依頼されることが増えたそうです。そんな需要の高まりを受けて、容器に入ったままの飲料や食品、冷凍食品、一斗缶など、廃棄が難しいとされる荷姿のものも幅広く回収しています。
分別が困難な食品廃棄物は一般的に焼却処理され、リサイクルされることはあまりありません。しかし、多くの処理実績を持つ同社では、ほぼ全ての排出パターンでリサイクルに対応。それを可能にするのが専用車両です。例えば、「高圧汚泥吸引車」は、液状廃棄物を直接吸引して運搬できるため、主に飲料品製造メーカーから多数依頼を受けているそうです。

廃棄物の種類ごとに異なる専用車両を使うので、回収段階である程度の分別が可能。同社に多数在籍する熟練の作業スタッフが回収してくれる
受け入れた廃棄物は、堆肥として最大限のチカラを発揮するように調合をして、1次処理で撹拌・熟成、さらに2次処理で再び撹拌と熟成を行い、約120日間かけて堆肥になります。「気候や湿度などによって、混ぜたり、寝かせたりといった微調整が必要です。人の目でしっかり確認しながら、良質な堆肥をつくっています」。手間暇のかかる作業ですが、不要なものを価値あるものへと変化させる大切な工程です。

微生物の働きによって発酵が進んでいる証である白い煙をあげながら、静かに完成の時を待つ堆肥
畜産業の原点があるからできる、生産者に寄り添う肥料づくり
一般の人も購入可能な商品として販売しているのが、完熟濃縮肥料「土の友」です。主原料は食品製造カスや乳業製造カス、鶏糞なので栄養価が高く、他の肥料に比べて少量で効果を発揮するのが特徴。また、水分量が少ないため軽く、持ち運びや散布がラクにできるところも好評なのだそうです。特に、ピーマン、ネギ、ニラ、トウモロコシ、柑橘類の栽培に適していて、個人から大規模農家まで幅広い生産者に選ばれています。
肥沃な大地を育む品質の高さや使い勝手の良さなどを考え抜いてつくられる肥料。畜産業からスタートした同社だからわかる“生産者の視点”を持っているからこそ実現できる商品だといえます。

完熟濃縮肥料「土の友」は、袋詰め商品だけでなくバラ売りも可能
農作物に合わせた調合も可能で、多くの生産者が同社の肥料を使っておいしい農作物を育てています。つまり、地元で発生した廃棄物由来の肥料が、地元でしっかりと消費されているということ。販路を確立できているからこそ、安定的に廃棄物の受け入れができるのです。

「土の友」は、さまざまな農作物を育てる農家をはじめ、植物園や園芸センターなどで使われています
産業廃棄物を“減らす”提案で、事業発展に貢献
事業者にとって、“廃棄物を減らせる”というのは処理の問題や環境保全の観点からも喜ばしいことです。実は秦社長の前職は環境コンサルタントで、海外の水処理問題などの環境課題解決に取り組んだ実績があります。「日本は高度経済成長期に経済発展を優先した結果、水質汚染や自然破壊などの環境問題が深刻化し、今ようやく改善に向けて取り組んでいる段階ともいえます。その問題のひとつの枝として挙げられるのが、廃棄物の問題なんです」。地球規模の課題を体感してきたこれまでの経験をいかして、廃棄物を“発生させない”提案にも力を入れています。例えば、汚泥が発生してしまう排水処理設備は、工程を見直せば改善が可能になるそうで、生産工程の設計段階から環境負荷を低減できるような工夫について、アドバイスできることも大きな強みです。

「環境問題を解決できるような、より付加価値の高い廃棄物処理方法を提供していきたい」と秦社長
牛専用の飼料を開発。いつかは原点の畜産業を再び!?
新たな取り組みとして、鮮度の高い廃棄物で作る牛の飼料づくりをはじめています。「おいしいかどうかは、牛に食べてもらわないとわからない」と、モニターになってもらうべく、実際に2頭の牛を飼って育てていたのだそうです。原料選定した廃棄物であれば加熱をせずにそのままの状態で使えるので、一般的な飼料に比べて製造のコストも大幅にカットできるといいます。配合量などを変えながら試行錯誤した結果、栄養価も高い飼料が完成に近づきつつあります。何より、「牛がおいしく食べてくれるものができました」と秦社長もうれしそうです。
「まずは牛の飼料で実績をつくって、畜産業の助けになりたいです。いずれは当社の原点である畜産業に再びチャレンジしてみるのもいいかもしれませんね」と、さらなる挑戦は続きそうです。

大豆とおからだけでつくる牛専用の飼料。いずれは豚や鶏など全ての家畜に対応した飼料を完成させるのが目標です
ダイナン株式会社
PROFILE
- 設立年月
- 2014年6月
- 代表取締役
- 代表取締役 秦仁視
- 事業内容
- 食品由来の不要物や有機性汚泥等の「飼料化・堆肥化」によるリサイクル
CONTACT
- 住所
- 大分市中戸次字大谷60番地の23
- TEL
- 097-597-4672
- FAX
- 097-529-5293
- メール
- info@dainan-rec.com
- HP
- https://dainan-rec.com/