価値を見いだしカタチにする まちづくりの仕掛け人OOTSU企画 [ 大分県別府市 ]
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地域ならではの農作物や伝統品などに注目し、作り手の思いに寄り添いながら、商品開発、販路開拓、情報発信などをサポートする企画事務所。“知られざる良いもの”を発掘し、パッケージなど細部までこだわることで価値を高めながら、売れる商品づくり、売れる仕組みづくりで地域活性化にも貢献しています。
「作る人・売る人・買う人の笑顔が見たい」をテーマに、大分県の魅力を発掘
『OOTSU企画』は、商品開発や販路開拓などさまざまな角度から経営を支援するコンサルティング会社。地域ならではの産品に付加価値をつけ、“売れる商品づくり”のサポートをしています。代表の大津雄慈さんは九州の道の駅100ヵ所以上を制覇した人に送られる『100EKI MASTER』の認定証を取得したり、野菜ソムリエや有機JAS審査員補の資格を取得したりと、作り手側の視点で活動を実践しています。
多彩な経歴を持つ大津雄慈さん。独自の視点でさまざまなサポートを実践している。
販路まで見据えた農業者を増やし、儲かる仕組みをつくる
百貨店のバイヤーとして30年、外商部や食品部などで経験を重ねた大津さん。食品部に所属していた頃に視察で訪れた他県で、農業高校の生徒たちが手がけた加工品の存在を知ります。客たちが手に取り、次々と売れていく様子を目の当たりにして、「生産者が、農作物を作るだけではなく、売ることまで見据えた商品づくりが必要だと感じました」。
大津さんは早速、大分県内の農業高校に働きかけたところ、流通課を新設予定の高校の校長から、「生徒たちがつくる商品をぜひ販売させてほしい」と逆オファー。催事で販売したところ反響が大きく、商品は完売したそうです。その催事の販売員は、農業科で学ぶ生徒たち。将来の農業を担う可能性が高い生徒たちに対して、「どのように値段が付き、どんな人が買ってくれるのか、どうすれば売れるのかを考えながら店頭に立ってほしい」と話したそうです。「これからは、農家自身が販路を意識した農業をしなければならない」と大津さんは、当初から“儲かる農業”に注力。「もっと利益を生む仕組みを確立できれば、農業従事者を確保できるはず」と、その思いは一層強くなるばかりでした。
商品の価値を高めて売上を伸ばすモデルケースを確立
大分県内には約50軒の直売所がありますが、多くが売上を伸ばすことに苦戦しているそうです。百貨店勤務時代、農作物直売の催事を成功させた経験を持つ大津さん。その経験をいかして顧問として支援したのが、農産品直売所『サザンカクロス野菜館』です。
農家では、農作物をつくって農協などに卸すまでが一般的な流れ。自分が育てたものがどこで売られ、どんな消費者が買ってくれるかという販路に関しては、あまり意識しない農家が多かったといいます。また、味は変わらないのに売れない、いわゆる規格外品が処分されている現状も知り、解決策がないかと百貨店、スーパーで販売してみたところ、意外にも消費者からの需要が高いことが分かったそうです。「小さいものやちょっとした傷モノも、使い方によっては逆にそっちの方が選ばれることに気づきました」(大津さん)。“形は悪いけど鮮度がいい”と評判になったことが、現在の『サザンカクロス野菜館』の生産者が儲かるきっかけになりました。
当初は日出町の専業野菜農家15名でスタートし、大型スーパー内で週末だけの限定出店でしたが、2004年に出資者を募り株式会社になりました。その時分には全店毎日出荷体制となり生産者からは会員を募り、現在130人以上が所属する組織として成長しています。現在は大分市、別府市、日出町に全5店舗を展開しています。そして15年程前より野菜売り場では珍しい販売専任の野菜ソムリエの資格を持つ方、販売のプロの方を中心に販売員を置いて、「売れる売り場づくり」戦略を試みた事は売り上げ拡大のひとつの大きな要因になりました。
サザンカクロス野菜館の売り場。新鮮な農作物を求めて、連日多くの客が訪れている。
販路が確立することで、消費者を意識した野菜作りをする農家が増加。品質も向上するという相乗効果を生んでいる。
ファン(消費者)をつくる仕掛けで、価値ある商品をさらに特別なものに。
知られざる農産品を発掘し、消費者へ届けることを意識している大津さん。手がけた商品のひとつが、宇佐市安心院町松本産の米を使った純米酒『イモリ谷』です。前職を退職したタイミングだった大津さん。「これまでの経験をいかして地域に貢献できることはないか」と考えていた時期でした。
米農家や酒造場とのつながりによって誕生した日本酒造りのプロジェクトは2003年からスタート。特徴は、米作りから仕込みまで、商品ができあがるまでの全ての工程に、地域の人、酒造りの人、販売をする人、そして消費者が全工程に参加することです。
毎年4月のミーティングからはじまり、田植え、稲刈り、酒の仕込み、販売と、全ての行程に携わってみると、商品はわが子のような存在に。美味しさや特別感もひとしおです。毎年限定販売で特別醸造する「純米酒いもり谷」はファンが増え続けて現在は百貨店、特約店等で定番化されています。大津さんが「作る前から売れている。これこそが究極のマーケティングです」と表現するように、確実に売れる商品づくりに成功しています。農商工+消(消費者)連携の仕掛けによって、未来に期待できる商品が完成。利益はもちろん、このプロジェクトを通じて地域を訪れる人も増え、地域活性化にも貢献しています。
このモデルケースの成功をかわきりに、『余谷』、『金屋』と2つの日本酒も誕生。まだ発掘されていない地域の力を発掘し、価値を高める商品にして発信するプロジェクトは、他の地域でもすでにスタートしています。
商品開発には、たくさんの人の関わりが欠かせない。できあがりまでのストーリーも大切にしているからこそ、ファンが増え続けている。
参加者による米作りの様子。毎年限定販売の日本酒は、プロジェクトに携わる参加者に優先して販売していました。
九州一のコーディネーターになるためには、企業を知ることから。
これまでの経験から、作り手と消費者の両方のニーズをとらえることができる大津さん。今後は、「大分、日本の良いものを海外へ発信したい」と意気込みます。
例えば、昔ながらの製法で作られる日本のお菓子は、後継者不足や経営の悪化などを理由に閉業してしまう老舗も多いのが現状。しかし、海外では伝統菓子の人気が非常に高く、「販路を確保し、売れる保障があれば、子どもたちの世代にも自信を持って継がせられるはず」(大津さん)と、作り手の現状、思い、夢に寄り添いながら、日本の伝統文化継承をも考えています。
「九州一のコーディネーターになることが目標。そのためには企業や農家など、たくさんの作り手の皆さんとつながりたい」と大津さん。「ものはあるけど活用の仕方がわからない」「地域の伝統を守りたいけれど何から始めればいいのか…」といった“最初の一歩”を一緒に踏み出す存在として、さらなる“作り手支援”に挑みます。
おいしい農作物を多くの人に確実に届け、作り手、売り手、買い手に利益を生む仕組みづくりを。
OOTSU企画
PROFILE
- 設立年月
- 2002年4月
- 代表取締役
- 大津雄 慈
- 事業内容
- 販路開拓・販売促進・新商品開発・企画・人材育成支援
CONTACT
- 住所
- 大分県別府市上人本町5-38
- TEL
- 0977-66-8333
- FAX
- 0977-66-8333
- メール
- ootsu-1@ctb.ne.jp
- HP
- http://ootsukikaku.web.fc2.com/