原木乾し椎茸のおいしさを知る、入口となる加工品を☆Shiitake-ya! [ 大分県竹田市 ]
- カテゴリ
- 農産物加工
うまみがつまった乾し椎茸は、価格や調理の手間などから、特に若い世代の消費離れが課題。そこで、手軽に使える加工品として開発したのが「Shiitake Bacon」です。原木乾椎茸をはじめ、100%植物性の素材のみで作るこだわりの一品は、乾し椎茸の魅力を伝える役割を果たす商品としても期待が高まっています。
生産量全体の約1割。豊かな自然の中で育つ「原木椎茸」
大分県竹田市は、くじゅう連山、祖母山、阿蘇外輪山に囲まれた自然豊かな地域で、湧水群も多数。自然の恵みが育む農作物は大分県を代表する名産品として知られるものも多く、そのひとつが、原木椎茸でつくる「乾(ほ)し 椎茸」です。
椎茸には「菌床椎茸」と「原木椎茸」があり、その違いは栽培方法。菌床椎茸はおがくずなどをかためたポット(菌床)に椎茸の菌を植えて栽培するもので、3~6ヵ月のサイクルで収穫できます。一方、原木椎茸は、クヌギの原木に椎茸の菌が含まれたコマをうち、ほだ場と呼ばれる自然の中の椎茸畑で栽培し、2年もの歳月をかけてようやく収穫できます。普段スーパーなどで見かけるもののほとんどが菌床椎茸で、栽培に手間と時間がかかる原木椎茸の流通量は全体の1割ほど。そのほとんどが乾燥した「乾し椎茸」として販売されています。
自身の経験が椎茸加工事業へと繋がる
20代の頃は東京で働いていたが、体調を崩したことをきっかけに30代前半に両親が住む宮崎県へ移住。そこで知人から教わったマクロビ食に興味を持ち、食生活を見直したところ驚くほど体調が回復したそうです。そして食材へのこだわりから、様々な自然農法を現地に行き見て学ぶことも始めました。宮崎オーガニックフェスティバルの実行委員や、料理教室、デリバリーのベジタリアンのお弁当店をはじめ、安全な食の販路拡大のために活動していました。その後、鹿児島県で原木椎茸の栽培を学ぶ機会があり、原木椎茸の美味しさと、生産することが環境保全に繋がる循環型自然栽培の原木椎茸の魅力に関心が高まっていきました。
きっかけは新燃岳の噴火
2017年に生産農家圃場で栽培方法や、乾し椎茸の製造を学んでいた時に、新燃岳の噴火による大規模な農作物への降灰被害がありました。その際に、灰がかかった収穫前の椎茸が大量に廃棄される現場に立ち会います。収穫までに多くの時間と労力が必要な椎茸が廃棄されるのを目の当たりにして、「自然災害など予期せぬ事態が起きても、無駄にしない方法が必要」と感じたことが、加工品製造に取り組みはじめるきっかけとなりました。
この場所だからできるものを。
2022年7月7日の乾し椎茸の日に原木乾燥椎茸の加工製造を専門とした『☆Shiitake-ya!』を開業しました。なぜ縁もゆかりもない竹田市へ?と尋ねると、「15年ほど前から年に数回、佐伯市野津で循環農法を提唱する『なずなの会』の農場へ訪れていたのですが、その際に竹田市に足を延ばして観光で訪れたことがきっかけです。標高が高く、九州とは思えないほど厳しい寒さですが、湧水も温泉もあり、野菜も椎茸も美味しくて、椎茸加工品製造をするにあたっては、これ以上の場所はないと思いました。」鹿児島県で知識を深めた椎茸を、質量とともに国内トップクラスを誇る一大生産地の竹田市で加工品事業を始める流れは、偶然のようで必然ともいえそうな挑戦がはじまりました。
2022年7月7日の乾し椎茸の日に原木乾燥椎茸の加工製造を専門とした『☆Shiitake-ya!』を開業
国内トップクラスを誇る一大生産地の竹田市
偶然のようで必然ともいえそうな挑戦がはじまりました
原木乾し椎茸を手軽に使える商品で、おいしさを知る「入口」をつくる
椎茸を乾燥させることで生成される「グアニル酸」は三大うまみ成分のひとつで、これを含む食材は貴重です。さらに、カルシウム、ビタミンD・E、カリウムなど栄養価の高さも注目されています。実は看護師、そして国際中医師としての顔も持つ舞草さん。「栄養があっておいしい」という特徴は、東洋、西洋ともに医学的な視点からも注目の食材だといいます。
椎茸自体は大分県民にとっては身近ですが、県外の人にとっては、乾し椎茸は手間がかかるというイメージも強く、消費量の減少が叫ばれています。『原木椎茸の消費拡大と生産維持』を目指すには、“手軽に使える加工品”であることが大切でした。
「私自身、原木の生椎茸を食べたときと、乾し椎茸の出汁を初めて食べた時には、今まで食べていた椎茸との違いに驚きました。このおいしさを手軽に知ってもらえる商品があると面白いなと」おいしさを知る入口になる商品をつくりたいという思いから誕生したのが『Shiitake Bacon(椎茸ベーコン)』と「Shiitake Drip(椎茸ドリップ)」です。
Shiitake Bacon(椎茸ベーコン)
椎茸?ベーコン?オリジナリティとこだわりの製法で、椎茸の魅力を最大限に
看板商品『Shiitake Bacon(椎茸ベーコン)』は、燻製した乾し椎茸をオイル漬けした商品。フタを開けると、食欲をそそる薫香が広がる一品です。
竹田市内でも有数の湧水エリア入田地区にある加工場では、調理工程で使用する水はすべて湧水を使用。こだわりの材料を使ってていねいにつくる自慢の一品は、食べると「ベーコン」をうたう理由がわかります。スモーキーな香りと、ほどよい食感、確かにベーコンのようだけど、ベーコンにはないしっかりとしたうまみ。素材の特長を最大限に引き出す製法によって、椎茸本来の魅力が存分に味わえる唯一無二の商品が完成しました。
「SHIITAKE UMAMI」液体調味料の開発に成功
水戻しの際に出るうまみたっぷりの戻し汁は、出汁として様々な料理に重宝されます。主に和食で使用される、この戻し汁を幅広いジャンルの料理で、手軽に食卓でも使える商品として開発したのが『Shiitake Drip(椎茸ドリップ)』です。うまみを残しながらも、さまざまな料理を引きたてる万能調味料として使えるようにと、椎茸特有の香りを和らげるハーブを使っているのがポイントです。誕生したばかりですが、乾し椎茸が持つ「うまみ」をダイレクトに味わえる商品として、これから注目を集めそうです。
Shiitake Drip(椎茸ドリップ)
乾し椎茸が持つ「うまみ」をダイレクトに味わえる商品として、これから注目を集めそうです
「大分といえばこれ」と手に取ってもらえる定番商品を目指して
地元の道の駅や土産店、こだわり食材を取り扱うECショップや、小売店、催事への出品など全国から引き合いが増え、口コミなどで販路が拡大し知名度は少しずつ高まりはじめています。
ベジタリアン、健康志向ユーザーに向けた商品開発 企業コラボ
レストラン、老舗肉まん屋さんとのベジタリアン向け商品のコラボ開発も進んでおり、それぞれの事業者の得意分野を生かした、企業コラボにも積極的に取り組んでいます。
2022年2月には大分県女性起業家創出促進事業『Oita Starring Woman』(現:『BUTTERFLY』)において、テーマ「原木椎茸を未来に残す 椎茸×イノベーション」でファイナリストに、同年8月には大分県地域課題解決型起業支援事業に採択、2023年2月には大分県ビジネスプラングランプリ奨励賞、同年5月に大分県科学技術センター 商品化プロデュース支援事業採択と、大分県が誇る名産品のさらなる知名度拡大には、多くの期待も寄せられています。
「加工品製造を通して、原木栽培椎茸の消費拡大につなげるためには、今のライフスタイルに合った様々なシーンで食す機会が増える必要があると思います。」様々なニーズに応えられる、新商品の開発も進んでいるようで、新たな発想で驚かせてくれそうです。
☆Shiitake-ya!
PROFILE
- 設立年月
- 2002年7月7日
- 代表取締役
- 舞草 綾
- 事業内容
- 乾し椎茸加工品の製造・販売
CONTACT
- 住所
- 大分県竹田市入田20番地
- TEL
- 090-2285-5506
- メール
- shop@shiitakebacon.jp
- HP
- https://shiitakebacon.jp