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あねさん工房株式会社

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あねさん工房株式会社-かぼす一筋 あねさんはね、絶対に妥協せんからね。 あねさん工房株式会社-かぼす一筋 あねさんはね、絶対に妥協せんからね。

爽やかな香りと酸味をまとい かぼすが新たな魅力を開花あねさん工房株式会社 [ 大分県豊後大野市 ]

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  • 農産物加工

2009年設立。早摘みの小さなかぼすを煮込んだ「やまのまりも」や、爽やかな緑と完熟の黄色、2種類の「かぼすコンフィチュール」、かぼすのピールで作る甘露菓子「かぼす日和」など、人気商品を次々に開発しています。現在、自社農園は約13ha。自ら育てたかぼすの青果や果汁の販売も行っています。

代表取締役 進藤 充啓さん

代表取締役 進藤 充啓さん

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小さな「やまのまりも」が創業のきっかけに

「やまのまりも」。このかわいらしいネーミングを聞いて、どんな商品を想像しますか? 実はこれ、早摘みした小さなかぼすの甘露煮なんです。その姿は、まるでまりも。しかし手間をかけ、じっくり10日間ほど煮込んだ実の中身はまるで餡子のようにクリーミーで、種まで食べられる新食感の逸品に仕上がっています。2011年には、「東京ビジネスサミット」で優良企業賞を受賞しました。

「最初はね、『都市との交流をしよう』とNPOから始めたんですよ」と教えてくれたのは、『あねさん工房』の進藤充啓代表取締役社長。

高齢化が進む地域を活性化したいという思いからのスタートでした。最初に取り組んだのは田植え。「鯉のぼりを立ててね。(地域外から人を呼んで)田植えをしてもらった。地元の新聞とかいろんなところでPRしていただいたもんやから、参加者がとても多くてね」。進藤さんは、当時を懐かしそうに振り返ります。

その時「(休憩で)お茶を飲むときに、何か食べてもらえるものを作ろう。お土産にもなるものを」と作ったのが、田植えの時期のまだ小さなかぼすを使い、地域の奥様方がオリジナルで“作ってみた”甘露煮でした。「そしたらたまたまいいやつができた。食べてもらったら、『こーら、おいしい!』っちゅうことになってな」。これが、「やまのまりも」のはじまり。稲刈りや年末の餅つきなど1年を通じて続いた交流でも、奥様方が作った小さなかぼすの甘露煮は大人気でした。

その噂は大分県関係者の耳にも届き、「ぜひ農業コンクールに出品を」と声がかかります。地域に来てくれた人たちをもてなしたいという心が生んだかぼすのお菓子が、地域を動かし始めたのです。

早摘みした小さなかぼすの甘露煮「やまのまりも」

早摘みした小さなかぼすの甘露煮「やまのまりも」

農業コンクールで最優秀賞を受賞

コンクールには、2種類のコンフィチュールも出品。夏に収穫する美しい緑色のかぼすを使った、爽やかな香りと程よい酸味の緑色のものと、晩秋から冬にかけて収穫する完熟した黄色いかぼすを使った、まろやかな酸味と甘さが調和したオレンジ色のものです。

結果、このかぼすのコンフィチュールが最優秀賞を受賞。実はこのときはまだ団体に名前がなかったのですが、「名前がないと賞状が作れない」と言われた進藤社長が、即興で『あねさん工房』と名付けたのだとか。

この“あねさん”とは、地元の女性たちが農作業などをするときに手ぬぐいやタオルを頭に巻く“あねさんかぶり”から取ったもの。今も名刺には、あねさんかぶり姿でカゴいっぱいのかぼすを抱えた女性のイラストと、「かぼす一筋」という一言が添えられています。

「やまのまりも」「かぼすのコンフィチュール」

「やまのまりも」「かぼすのコンフィチュール」

“あねさん”とは、地元の女性たちが農作業などをするときに手ぬぐいやタオルを頭に巻く“あねさんかぶり”から取ったもの

“あねさん”とは、地元の女性たちが農作業などをするときに手ぬぐいやタオルを頭に巻く“あねさんかぶり”から取ったもの

ビギナーズラックは続かない

その後、県からの「大分特産のお土産にしてほしい」という要望もあり、商品化することに。加工所を建てるのにも苦労話があるのですが、それより大変だったのは、おいしくて美しい「やまのまりも」を安定的に作ることでした。「何もせんでポクーっとできたものやから、量産しようと本格的にやりだしたら失敗だらけ」と、進藤社長。茹でてみると真っ黒になり、「やまのまりも」には不可欠な、美しい緑色が消えてしまうのです。しかし、そうなる理由が分かりません。「どこかで習おうにも、教えてがねえ。日本中のどの大学にも、カボスの加工をするような課は何もねえから。失敗だらけで、1トンはかぼすを捨てましたよ」。

採算も合わず「もう辞めよう」というところまで追い詰められたとき、ひょんなことから美しい緑色で茹で上がります。その理由の解明にも時間がかかりましたが、結局それは、進藤社長も「そげんことか」と思うほど些細なことだったといいます。「物はな、失敗せんと成功せん」。実感がこもった、深い一言です。

そしてその成功の影の立役者は、製造に携わる地域の女性たち。「女性はね、今日より明日と品質に対してどんどん厳しくなっていく。みなさん、絶対に妥協はせんからね」と進藤社長。クオリティーの維持にも、働く女性たちの力は欠かせません。

県からの「大分特産のお土産にしてほしい」という要望もあり、かぼすを商品化することに

県からの「大分特産のお土産にしてほしい」という要望もあり、かぼすを商品化することに

採算も合わず「もう辞めよう」というところまで追い詰められた末にできた、あねさん工房の商品たち

採算も合わず「もう辞めよう」というところまで追い詰められた末にあねさん工房の商品はできたという

老舗フルーツ店も認める唯一無二の逸品

苦悩と試練の末に商品化された「やまのまりも」は、フルーツのプロもその完成度に感服しています。5年前から取引を続けているのが、東京の老舗フルーツ店『新宿高野』。料理長からは、「これをここまでやったのは、すごい。苦労されたでしょうね」と声をかけられたそう。

現在では、「やまのまりも」や2種類のコンフィチュールに加え、緑と完熟の2種類のかぼすピールで作った「かぼす日和」も商品化。お土産に人気なのはもちろん、地元のカフェが「かぼす日和」を使ったお菓子を作るなど、新たな展開も生まれています。商品としても、箱詰めの贈答品から簡易パッケージのものまでさまざま、業務用も豊富に揃っています。

じっくり10日間ほど煮込んだ実の中身はまるで餡子のようにクリーミーで、種まで食べられる新食感の逸品に仕上がっています

苦悩と試練の末に商品化された「やまのまりも」は、フルーツのプロもその完成度に感服しています

いい商品を作るため、いいかぼすを育てる

そんな自慢の商品を支えているのが、2014年から始めた自社農園13haにまで増えた農園では、どこも平地に5mの感覚をあけてかぼすを植えています。

その理由は、作業がしやすいよう、軽トラックや乗用の草刈機も通れる幅を確保するため。間隔をあけることで、平地でも1本1本の木に十分に太陽が降り注ぎ風も通るため、とてもいい条件で育てることができます。しかも栽培法は、低農薬。1カ所の農園では有機栽培を行なっています。

2014年から始めた自社農園

2014年から始めた自社農園

果汁や青果も販売、新商品の開発にも注力

自社農園が増えた今、収穫するかぼすの量も格段に増えてきました。そのため、加工商品だけでなく、収穫したその日に絞って凍らせた果汁や、冷凍の果皮、新鮮な青果も販売しています。

新商品の開発にも余念がなく、最近ではかぼすの果汁だけでなく果皮も使った「かぼすドレッシング」や「かぼす味噌」も完成。果皮を使ったドレッシングは非常に珍しいのですが、進藤社長も「皮を入れたら、ゴロっと(とても)おいしくなった。油も少ないんよ」という自信作です。

かぼすは爽やかな香りも大きな魅力なのですが、熱に弱いのが弱点。「熱で香りが全部飛ぶけん、入浴剤がなかなかでけんのや」と、進藤社長。皮から香料を作り、それを使って入浴剤ができないか。皮を粉末にすれば、もっといろんなものに使えるのではないか。進藤社長の開拓精神と熱意は、止まることを知りません。今後も、まだまだかぼすの特産品が誕生しそうです。

「かぼす味噌」や「かぼすドレッシング」

「かぼす味噌」「かぼすドレッシング」「かぼす日和」など新商品も続々

あねさん工房株式会社

あねさん工房株式会社

PROFILE

設立年月
2009年6月
代表取締役
進藤 充啓
事業内容
農産物の生産、加工販売(主にかぼす)

CONTACT

住所
大分県豊後大野市緒方町冬原832-3
TEL
0974-45-2928
FAX
0974-45-2928
HP
https://anesan.shopselect.net/

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