

創業者の思いを重視しながら 故郷の味「とり天」を全国区に有限会社デリカフーズ大塚 [ 大分県大分市 ]
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大分の郷土料理「とり天」を後世へつなげる役割を果たしながら、全国・世界へとそのおいしさを広げるために、家庭で簡単に味わえる多彩な商品を開発。専門店で味わう本格的な味を追求し、近年のニーズである“時短調理”を実現できる商品開発の技術は、一般の家庭はもちろん、料理のプロからも選ばれています。

取締役部長の高原さん(左)、常務取締役の桝田傑さん(右)
大分の郷土料理「とり天」を手軽に作れる、独自開発の専用品
大分を代表する郷土料理といえば『とり天』。これを家庭で食べるという文化を根付かせるために尽力した企業のひとつが、『デリカフーズ大塚』です。創業者である大塚次生さんは、日頃から何気なく食べていたとり天が大分発祥であることに気づき、作り方を調べて商品化したのが昭和60年代のことです。
専用の下味調味液、粉、タレを開発し、自宅でお店の味を再現できる商品を発売。そこから、揚げるだけで作れる商品や、レンジで温めるだけで食べられるフライ済みの冷凍とり天など、時代のニーズに合わせた商品を次々と開発してきました。当初はなかなか受け入れてもらえない時代もあったそうですが、先見の明ともいえる視点で「デリカの時代が来る」と見越して開発を続けてきた結果、中食文化の広がりも重なって、着実に売り上げを伸ばしています。

調理師や料理人が手がける商品は、食べる人と作る人の両方の思いをカタチにします。
M&Aにより『ミカド肉店』の傘下に。二社の得意分野で裾野を拡大中
2022年、M&Aによって、別府市に本社を構える総合食肉卸業『有限会社ミカド肉店』へ事業を承継。主に鶏肉を扱うデリカフーズ大塚と、牛肉をメインに扱うミカド肉店、各社それぞれの得意分野をいかして裾野を拡大しています。「ミカド肉店ではホテルや旅館、レストラン、結婚式場を得意先としてもっています。これまでの牛肉商材とあわせて、とり天などを提案できるようになりました。商流が増えたという手応えは感じています」とは、常務取締役の桝田傑さん。朝食などでとり天を採用してくれるホテルや旅館が増え、大分県の郷土料理を観光客へ周知するきっかけにもつながっているといいます。
さまざまな業界で人材不足が叫ばれていますが、料理人も例外ではありません。料理人不足の課題解決に向けて、温めるだけでできたての味を再現できる調理済の食材など、手間を減らす加工品にも要望に合わせて対応可能。創業からこれまでに築いてきた歴史の中で培ったノウハウがあるからこそできる強みです。さらに、「当社の製造スタッフには調理師や料理人が在籍しているので、再現度が高いと評価をいただいています」と、作る人だけでなく、食べる人の笑顔まで想像した商品づくりは、創業から変わらない徹底したこだわりです。

「前社長からの“若い発想を大切にしてほしい”という思いを受け継いだ桝田常務の新たな挑戦にも期待が膨らみます。
アイテムを増やすのではなく、“極める”。
とり天関連の商品をはじめ、からあげやとりめしの素といった郷土料理、ベリーツや清川産の桃など県産品を使ったシャーベットなど、大分愛にあふれる商品を取り扱っています。
中でも、さらなる販路拡大を目指しているのが、とり天専用の『とり天粉』です。同社で製造している下味調味料『とり天調味液』とあわせて使えば、自宅で簡単に本格的なとり天が作れる商品。ふるさと納税では粉と調味液のセットや、鶏肉をあわせたものも採用されました。コロナ禍以降の中食文化の拡大もあり、売り上げは好調だといいます。「からあげの粉はたくさん販売されていますが、とり天専用の粉って意外とないんですよね。可能性はまだまだあると感じています」と桝田常務は、ブルーオーシャンを開拓できる商品として期待を寄せるアイテムのひとつです。
お店で食べるような本格的な味を再現できる理由は、山いも粉を使っていることです。創業者が研究に研究を重ねた独自配合の粉を使うことで、とり天ならではのふわっとした軽い食感を実現。下味調味液と合わせて使えばそのままでもおいしいのですが、専用タレにつけたり、カレーに入れたり、タルタルソースをかけて南蛮風に味わったりと、アレンジのしやすさも意識しているそうです。
創業からこれまで培ってきた技術と知識があるからこそ、さまざまな商品を生み出すチカラを持っていますが、「アイテムを増やすというよりは、変わらないおいしさを追求していきたいです」と話す桝田常務の思いは、『不易流行』。郷土料理を伝承する企業としての役割を果たしたいという強い意志を感じます。

下味調味液やとり天粉の他、とり天専用のたれも販売。研究を重ねた味はお店の味そのもの。
とり天の知名度を全国に広げ、県外にいる「とり天難民」を救いたい
全国規模でみると、まだまだ知名度が高いとはいえないとり天。商品を手に取り、味わってもらうためには、まずとり天の知名度を全国規模に広げることも企業としての役割だととらえています。県内では、大分トリニータのホームゲームでの出店や、地元のお祭りや各種イベントなどで移動販売車を出すなど、魅力拡大に向けた地道な活動もおこなっています。県外で暮らす大分県出身者からは、「とり天を食べたいのに、食べられる店がない」という声も多いそうで、「当社の商品で、全国のとり天難民を救いたいんです」と意気込んでいます。

地元のお祭りや各種イベントなどで移動販売車を出すなど、魅力拡大に向けた地道な活動もおこなっています(取締役部長の高原さん)

とり天の魅力拡大に向けた地道な活動もおこなっています。
「とり天を全国規模にしたい」という強い思いが、商品開発の原動力。全国で知られる大分名物はさまざまありますが、「大分の郷土料理といえばとり天と言ってもらえるように認知度をアップしていきたい。さらには“とり天といえばデリカフーズ”、と認知されれば最高ですね」と笑顔の桝田常務。そのためにも、創業者の思いと伝統を守りながらも柔軟な姿勢で、さらなる挑戦を続けます。

工場には、完全手作りのとり天やとり飯などを販売する直売所を併設。地域に根づく姿勢は変わりません。
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有限会社デリカフーズ大塚
PROFILE
- 設立年月
- 1988年創業
- 代表取締役
- 桝田 浩
- 事業内容
- 食品加工、惣菜、製造、販売
CONTACT
- 住所
- 大分県大分市大字津守1228番地の2
- TEL
- 097-568-4729
- FAX
- 097-568-4149
- HP
- http://bungo-toriten.com/