源流の強み島だからできること株式会社おおいた姫島 [ 大分県 ]
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国東半島の上に浮かぶ自然豊かな「姫島」で、全国を相手に奮闘している『おおいた姫島』。島の宝である希少なひじきは、今や都市圏の百貨店催事で1、2を争う売り上げを誇るまでになっています。無塩わかめや特産の車海老のスープなど、次々と新商品も開発し、衰退が進む漁業の一助になるシステムや、全国の島をネットワークする取り組みも開始。島の未来の開拓へ向け、動き出しています。
代表取締役社長 小岩直和さん
島のひじきは本当においしいのか?
『おおいた姫島』を創業した小岩直和社長は、姫島生まれの姫島育ち。家業は島の造船業です。就職先の名古屋から家業を継ごうと帰島しますが、「まだ継がなくていい」という父親の一言がきっかけで、島の特産品に目を向けることになりました。まず考えたのが、島の特産品である海産物を島外で販売すること。
「当時は、“付加価値”とかっていうのは全然分からなくて。ただ純粋に、島のものを外に持っていったら売れるんじゃないか?という安易な考えですよ」と、小岩社長。同時に「島の中でおいしいといっているものが、島外ではどのくらい通用するのだろうか」という思いも湧きあがるなか、販売商品に選んだのは島の自慢の逸品「姫島ひじき」でした。
まず移動販売車を手に入れ、県内のスーパーマーケットの店前で販売するところからスタート。しかし当初は苦戦の連続だったと言います。
『おおいた姫島』を創業した小岩直和社長は、姫島生まれの姫島育ち。家業は島の造船業
おいしさの理由が、付加価値に
その頃、姫島の中では「島のひじきはおいしい」というのは当然の事実としてあり、「なぜおいしいのか」を説明できる人はいませんでした。そんな中、小岩社長は「他と比べてもおいしい」その理由をきちんと説明しようと考えます。
すると、日本で最も早い12月に、島の周りの海で2日だけしか獲れない新芽の柔らかいひじきだということ。島で代々受け継がれてきた「大釜薪炊き製法」で一気に炊き上げ、一度水洗いしてさらに炊き上げるこだわりの茹で方。さらに、茹でたひじきを網に広げじっくりと天日干しして仕上げる干し方まで、実はすべてがおいしさに直結していたのです。
価値とおいしさを実感できたことから、百貨店催事でこれまでより価値を上げて販売したところ、徐々に「姫島のひじきは美味しい」という口コミが広がっていきました。
百貨店催事でこれまでより価値を上げて販売したところ、徐々に「姫島のひじきは美味しい」という口コミが広がっていった
「幻の2日ひじき」の誕生
百貨店催事に少しずつ参加しながら、ECサイトでの販売も開始した頃、紹介されたのが『47クラブ』。ECサイトの運営や販売についても学んでいる時、飲み会で同席した『47クラブ』の栗田社長との会話が転機となり、『幻の2日ひじき』という新たな商品名が誕生します。
実は、県外では“姫島”という名前や、自然が豊かで海産物も豊富というバックグラウンドも知られておらず、そこで『姫島ひじき』という名前を出しても、反応がないことを実感していました。パッケージも一新し『幻の2日ひじき』としてブランディングしたことで、「百貨店の催事にも入りやすくなったことが、一番大きかった」と、小岩社長も当時を振り返ります。
パッケージも一新し『幻の2日ひじき』としてブランディング
そんなに高いひじきが売れるのか?
そんな『幻の2日ひじき』に付けた価格はチャレンジングなものでした。「15g 972円。恐ろしい価格です(笑)」と、小岩社長。しかし名前を変え、価格を含めて価値を上げたことで「価値があるものがほしい」という百貨店の思いとも合致。
実際に、「『幻の2日ひじき』の業者の次の出店はいつ?」という問い合わせが百貨店に来るほど、価値あるものを求めるリピーターの獲得にもつながりました。そして、「本物をきちんと届ければ認められる」と気づくきっかけにも。「高い」と思える金額設定も、一つの価値なのだと改めて実感できたのです。
同時に、島の中と外で価格差をつけることもやめたと言います。「島の中で972円で販売を始める時は、かなり勇気がいりました」と小岩社長。それはとても大きな決断でした。
本当においしいひじきだから価値がある
小岩社長が大切にしているのは、1年で2日しか獲れない貴重なひじきの味を、そのまま全国へ届けること。「筍も、伸び始めが美味しいじゃないですか。ひじきも同じで、早く獲った方が繊細なんですよ。柔らかいし、食感もいいし、風味もいい。新芽なので、芽ひじきとは全く違います」。
『幻の2日ひじき』は、味にばらつきを持たせず、高品質を確保するため、採取の場所から生産者、製造工程まで、全てを『おおいた姫島』で管理。「信頼ができる漁師さんからしか仕入れません。そして、試食した際に『おいしくない』と感じたものは、『幻の2日ひじき』ではなく、『わせひじき』にランクを落としています」。
そんな貴重な新芽だけを使った『幻の2日ひじき』は、水で戻せばそのままサラダにできるのも特徴。それは、柔らかく食感がいい証でもあります。
その後、水で戻した時の食感や風味を良くするため、塩を使わずに仕上げた『無塩わかめ』も製造。ソース、タコのカレーなどオリジナル商品も増え、新たな商品開発にも意欲的です。
貴重な新芽だけを使った『幻の2日ひじき』
タコのカレー
オリジナル商品
販売の方法を知らない。島をめぐるプロジェクト
「どうやっておいしいと伝えて、どう売るのか」という難題に立ち向かい、『幻の2日ひじき』作りに成功した『おおいた姫島』。
しかし国内には、自慢の産品はあるのに「どうやって売ればいいか分からない」という悩みを抱えた島や地域がたくさんあります。島からは輸送コストなどもかかるため、商売をするのは難しいという実情も。そこで小岩社長が始めたのが、寝泊まりができ、コワーキングスペースとしても使えるよう改良した軽トラックで、全国の島をめぐる活動。「生産者や生産物を、飲食店や個人客につなげることができたらと思って、始めたんです」。次第に賛同する仲間や、新たな産品の発掘や発見も増えてきました。
「島には、本当にこだわってものを作っている、アツいプロフェッショナルはたくさんいるんですよ。でも、それを売る人がいないんです」。そんな問題の解決につながればと、『デリ河岸』も開始。漁師が獲ってきた魚の写真を撮ってLINEで送ると、それをほしい消費者や飲食店が通知を受け取ることができるシステムです。漁師が販売まで行う必要があるため難関は多いことは覚悟しながら、「だけど絶対にきますよ。漁師が、自分で個包装して出荷する時代が。だから成功事例を作るしかないと思っています」と、小岩社長。
生産者直送のシステムだけでなく、全国の島の自慢の産品を集めて販売する『島の逸品』というサイトも構築中です。
「どうやっておいしいと伝えて、どう売るのか」という難題に立ち向かい、『幻の2日ひじき』作りに成功した『おおいた姫島』
小岩社長が始めたのが、寝泊まりができ、コワーキングスペースとしても使えるよう改良した軽トラックで、全国の島をめぐる活動
旬なものを旬な時に届ける人になりたい
「市場に出る前に、源流(島)で商売をするっていうのが、凄く大事だと思っているんです。それが、源流(島)の強み」」と小岩社長。「(離島同士がまとまって)価値あるものを持っているチームですよ、ってなった方がいいと思うんですけど、それがまた難しい。だから、今は勝手に風呂敷だけ広げているんです」。
しかし、広げた風呂敷の上には、徐々に信頼と商品が揃いつつあります。「旬な時に旬のものを持っていける人になりたい」という夢を抱え、全国、さらには海外を目指して。日本の島の旬を届ける島のプロとして、今日も島からの発信を続けています。
日本の島の旬を届ける島のプロとして、今日も島からの発信を続けている
株式会社おおいた姫島
PROFILE
- 設立年月
- 2015年7月21日
- 代表取締役
- 小岩 直和
- 事業内容
- 水産物加工・販売
CONTACT
- 住所
- 大分県東国東郡姫島村2051番地
- TEL
- 0978-87-2067
- FAX
- 0978-87-2068
- メール
- koiwa@oita-himeshima.jp
- HP
- https://oita-himeshima.jp/