閉じる
メルマガだけのお得な情報満載!大分の食にまつわる旬な情報をいち早くお届けします。たすきのメルマガ。無料会員登録はこちら。
個別相談依頼は
こちら

蜂と旅して繋ぐ伝統、紡ぐおいしさ近藤養蜂場 [ 大分県杵築市山香町 ]

  • カテゴリ
  • 清涼飲料

大分県の国東半島で110年以上続く養蜂場。明治43年にれんげの花の採蜜から養蜂を始め、2代目からは開花に合わせ北海道まで蜂とともに旅をする「転地養蜂」に転換。以降、砂糖不使用の蜂蜜ジャムを考案するなど自社採蜜の蜂蜜を使った加工品製造を始め、近年はゆずやカボスも自家栽培するなどの商品の幅を広げています。7年前からは、調味料にもなる蜂蜜の新ブランドも立ち上げ。伝統的な転地養蜂を主軸に、新商品の開発やOEMにも積極的に取り組んでいます。

代表取締役社長 近藤成明さん

この記事をシェアする

明治42年創業、養蜂一筋115年

蜂とともに旅をする」。近藤養蜂場が続けている転地養蜂には、まさにこの言葉がぴったりです。大分県の北部、国東半島を拠点に、果実や樹木の開花に合わせて島根、北海道へ。蜂と一緒に移動を続けています。毎年3月末ごろになると、巣箱を地元・豊後高田市内の菜の花や近隣のれんげ畑へ。蜂たちは花に誘われ採蜜を始めます。一昔前までは、大分で蜂蜜といえばれんげの花から集めたれんげ蜜が一般的。明治42年に養蜂を始めた初代が採蜜していたのも、れんげの花でした。しかし、耕作する田んぼの減少や栽培方法の近代化などで、現在ではれんげ畑は大幅に縮小。養蜂家が自ら田んぼに種を蒔き、れんげ畑作りから行っている場合が多いとか。近藤養蜂場では毎年、国東地域で契約した30haほどの田んぼにれんげの種を蒔いています。

巣箱は、花が咲く季節になると蜜源(花)の近くに移動させる。蜂は果実の受粉を助けるため、イチゴやメロンの農家に貸し出すことも

春になり、近藤養蜂場が最初に採蜜するのは菜の花。ただ、菜の花の蜂蜜は糖度が高いため、扱うのが難しいそう

伝統的な転地養蜂を守り、継承する

転地養蜂を始めたのは、2代目の頃。以降4代社長の成明さんまで、伝統的な転地養蜂を続け、開花に合わせ島根、さらに北海道へと蜂とともに旅をしながら採蜜をします。だから、近藤家は代々蜂のプロフェッショナル。特に、近藤社長のお父様でもある先代社長の近藤純一会長は、「蜂とともに生きているような人ですよ」と、近藤社長。「会長はね、やっぱりすごいですよ。僕らでは真似できないことが多い。巣箱の横で寝たりするくらい、蜂のことが大好きなんですよ」。会長は、80歳を超える今も養蜂家として活躍中。旅を続けながら、蜂の声に耳を傾ける日々を送っています。

近藤社長自身も現役の養蜂家。最近の気候変動は、花や蜂への影響も大きいと言います。気温が高く通常よりも早く開花し、「蜂の体が追いつかずに、開花しても蜜が取れないこともあるんですよ」。

蜂と一緒の旅なので、移動は常に陸路。「ここから北海道に着くまでは36時間ぐらいですね。5月から10月ごろまでは、蜂と一緒にずっと北海道にいます」と、社長

近年は夏に高温が続き、冬になっても気温が下がらないことも。養蜂にも、常に変化や試行錯誤が必要になっている

味わい深い、自家採蜜の国産蜂蜜

伝統の転地養蜂で採蜜する国産蜂蜜の味わいは格別。レンゲ、アカシア、百花など、食べ比べてみるとその味わいの違いにも驚かされます。社長が「北海道でクマと戦いながら採蜜している」というアカシアは、透明度が高く味わいもさっぱり。クセがなく、一番人気の蜂蜜だとか。さまざまな花の蜂蜜がブレンドされた「百花」は複雑な味わい。採れる季節や地域によっても味わいが変わります。

最近では、外国産の蜂蜜も取り扱うようになりました。ルーマニアのアカシア、ブラジルのコーヒー、ベトナムのライチなどなど。「僕はベトナムの蜂蜜にとても興味を持っていて、10年ほど前から現地に行っているんです」。養蜂場との提携や、養蜂の指導などにも携わっているそう。「ベトナムのライチ蜂蜜は、僕のイチオシです」とのことで味見をさせていただくと、とってもフルーティ! 濃厚な香りはライチそのものです。「杏仁豆腐にかけたらすごくおいしいんですよ」と、教えてくれたのは、商品開発を担当し社長の実の妹さんでもある安藤綾美さん。「ライチは酸味も強い蜂蜜なので、シナモンなどちょっとクセのあるスパイスとも、とても相性がいいんです」。

各地で採蜜。巣箱が蜜で満たされると遠心分離機で蜜を取り出し、最終的な瓶詰めまで、一貫して自社で行っている

「実際に食べていただければ、国産の蜂蜜の味わいの繊細さが分かっていただけると思います」という自社採蜜の蜂蜜は、色合いも実に美しい

香りからも採蜜した花が分かる。「カボスの花から採ったものはカボスの、ゆずの花なら若干ゆずの香りがするんですよ」

蜂も蜂蜜も、なくてはならない存在

社長と妹の安藤さんにとって蜂は、小さな頃から物理的にも精神的にも身近な存在でした。そんな蜂が採ってくれる蜂蜜も、家庭に欠かせないもの。「小さい頃から、うちにはお砂糖がなかったんです。母がお料理で使うのもすべて蜂蜜。甘みには蜂蜜を使うのが当たり前の中で生きてきたんですよね」と、安藤さん。

そんな生活に今改めて感謝しているとも。「私たち家族は、骨折を一度もしたことがないんです」。蜂蜜の抗菌性はよく知られていますが、実は蜂蜜にはミネラルやビタミンも豊富に含まれており、食べ続けることで骨密度も高くなるのだとか。「やっぱり、蜂蜜って神秘的なものですよね」。安藤さんの何気ない一言には、深い実感がこもっていました。

「生まれた頃から蜂がそばにいるんです。家の玄関の横にも巣箱があったから、友達はうちには遊びに来なかったですね(笑)」

取材に訪れたのは冬。蜂たちは暖かい九州の国東半島で、春の開花を待ちながら休息する

「小さい頃はジュースもまったく飲まなくて。喉が渇いたら、蜂蜜と水の蜂蜜水を飲んでいました」と笑う、安藤さん

ジャムやゆず茶も、砂糖不使用

そんな暮らしから生まれたのが、砂糖を使わずに果実と蜂蜜だけで作るジャム。「うちはペクチンも使っていないので、ジャムというよりソースに近いかな。蜂蜜は少量でいい味わいになるので、お砂糖を使ったものよりさっぱりと仕上がっていると思います」と、安藤さん。

近藤社長の代になると「蜂蜜の専門家として、蜂蜜のおいしさを伝えたい」と、加工品にも着手。その最古参は、ゆず茶、かりんや生姜の蜂蜜漬です。素材の特徴やおいしさを引き出すためのこだわりは深く、使うのはすべて青果。加工にも工夫が詰まっています。例えばゆず茶は、「うちではゆずの苦味が出ないよう、一手間、いやふた手間かな、加えています」と、安藤さん。千切りではなく輪切りにして蜂蜜に漬け込み、その後その全てを砕いてから炊き込むことで、ゆずの実を丸ごと味わえるようにしています。生姜もすべて国産。自社でスライスして蜂蜜に漬け込み、手作業で何度も混ぜ合わせているとか。使う蜂蜜は果物など素材によって使い分け、手間を惜しまないのがおいしく仕上げる秘訣です。

ゆず茶や生姜の蜂蜜漬は、20年以上のロングセラー商品。ゆず茶は飲むだけでなく、ドレッシングや漬物、肉料理のソースに使うのもおすすめ

ゆずはすべてスタッフによる手切り。使うゆずはすべて自社農園で育てたもので、実は県内屈指のゆず・カボスの栽培農家でもある

辛味や甘みがバランスよく、しっかり浸かった樽から生姜だけをとりだして瓶へ。さらに専用の蜂蜜液を加えて完成させる

調味料としても万能な蜂蜜を、もっと身近に

7年前には、「料理に合う蜂蜜」がコンセプトの新ブランド「BEE my HONEY(ビーマイハニー)」も誕生。欠かせない食材であり毎日の調味料でもある蜂蜜を、もっと多くの人に使ってほしいという思いが込められています。

実は以前から、「自社で扱う蜂蜜はスパイスやハーブととても相性がいい」と考えていたという社長。蜂蜜にシナモンやカルダモンなどを漬け込んだ「大人のレモネード」をきっかけに、「胡椒」、「塩」、「シナモン」などが続々と完成しました。「塩蜂蜜は、豚のブロック肉に塗って一晩置くとお肉が柔らかくなるんです。蒸し豚にすると、とってもおいしいんですよ」と、安藤さん。「蜂蜜単体だけでなく、蜂蜜と合わせることでさらに相乗効果を発揮してくれるものは何だろうって。そんなことをいつも考えているんです」。お客様からいただく声も、貴重な財産。「こんなふうに食べたらおいしかったよ」という声を聞き、さらにブラッシュアップ。商品の紹介方法や新商品の開発にも繋げているそう。

「『この蜂蜜にはあれとこれが合うかな』と、妄想するのも大好きなんです」と、本当に楽しそうに話してくれる安藤さん。自身も、お料理には全て蜂蜜を使っているそう

「BEE my HONEY(ビーマイハニー)」の定番ラインアップ。「シナモンは、このままパンに塗ってももちろんおいしんですが、チャイにもすごく合うんですよ」と、安藤さん

養蜂を軸に、商品開発の歩みも止めない

昨年10月には、「大人のレモネード」をさらに飲みやすく仕上げた「はちみつ シナモンレモネード」と、「はちみつ ミント&ゆずモヒート」が新登場。「シナモンレモネード」は、「甘いものが苦手という男性にもすごく人気。ヨーグルトに合わせたらとてもおいしいんです。シナモンと蜂蜜なので風邪予防にも。私も毎日食べているんですよ」と、安藤さん。

自社の商品作りだけでなく、OEMも多数受注。「うちで製造するものは全く添加物を加えていないので、素材本来の味を楽しめるのが一番強みだと思います」。少量でも受け入れが可能で、「商品開発や販売まで、フルサポートする体制も整っています」。

そんな中でも「うちは養蜂が背骨」と、社長。「転地養蜂をベースに、いろんな枝葉をつけていくというイメージですね」。代々続く養蜂を守り継承していくことを主軸に、これからも花を追って蜂と旅する生活は続きます。

新商品の「はちみつ シナモン レモネード」のラベルはこれまでと趣向を変え、使っている素材のイラストを載せた

OEM商品も数多く手がける。試作から製品作りまですべて社内で行うため、テストから販売までが短時間でできるのも魅力

「伝統的な転地養蜂を守りながら、蜂蜜との相乗効果があるおいしい組み合わせも追求していきたいと思っています」

近藤養蜂場

PROFILE

設立年月
明治42年
代表取締役
近藤 成明
事業内容
養蜂業・はちみつ・ローヤルゼリー及び加工品製造販売

CONTACT

住所
大分県杵築市山香町大字向野2252-1
TEL
0977-76-2266
FAX
0977-76-2134
HP
https://www.832.co.jp/

この記事をシェアする