

地域と共に。若き6代目の新たな挑戦ユワキヤ醤油株式会社 [ 大分県大分市 ]
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1854年創業の「ユワキヤ醤油株式会社」。大分の食文化の継承・振興をテーマに積極的な商品開発を行う傍ら、近年は地域資源の活用を通じた地域課題の解決にも取り組んでいる。 それらを牽引するのは6代目の門脇裕一郎さん。特に生まれ育った竹中への想いは強く、地域活性化のために何足もの草鞋を履き、“寝る暇はあるのか!?”というほど忙しい日々を過ごしている。根底にあるのは5代目である父・門脇正幸さんから受け継いだ地元愛と「地域が元気になれば、企業も発展する」という想い。60歳で迎える創業200年を目指し、今後も走り続ける予定。

取締役 門脇 裕一郎さん
SDGsを主題にイオン九州株式会社、楊志館高校とコラボ
受け継いできたものを大切に、常に進化・変化を続ける『ユワキヤ醤油株式会社』。現在は、大分県産品の活用、SDGs、地域活性化などのテーマを掲げ、一企業の枠にとどまらない“未来を見据えた”様々な挑戦を行っています。そのひとつがイオン九州株式会社、楊志館高校の調理科とコラボしたドレッシングづくりです。
「SDGsを主題に、楊志館高校の調理科の学生さんが規格外の原料を使ったレシピを開発。それをうちが商品化し、イオン九州さんで売るという取り組みです。今回はイオンアグリ(イオンの100%子会社の農園)さんに規格外のトマトとじゃがいもを提供していただきました。」そう話すのはユワキヤ醤油6代目の門脇裕一郎さん。
SDGsを主題にしているため、売れ残っては意味がありません。“売り切る”をテーマに学生が考案したレシピを門脇さんが商業ベースに乗るように調整。試行錯誤を重ねながら、2024年2月にトマト、4月にじゃがいものドレッシングが完成しました。その後、イオン九州系列の店舗やネット通販、楊志館高校のイベントなどで販売され、大きな反響を呼んだといいます。

楊志館高校の調理科の学生とのコラボで誕生したドレッシング「九州高原ポテト 白獲れ(しろドレ)」と「まるまる赤トマト 赤獲れ(赤ドレ)」。
今年度は昨年度のコラボにJAおおいたも加わり、大分県産の大葉を使った商品づくりを予定。門脇さんはこの企画に大きな可能性を見出しています。「実は大分市の農政課から県産の大葉やニラ、長ネギの普及についてずっと相談されていたんです。協力したい気持ちはある。でもうち1社ではどうしても販売の部分で尻込みしてしまって…。今回のようにイオンさんやJAさんに入っていただくことで販売の部分が大きく前進します。うちにとってもありがたい企画ですね。学生さんからもたくさん刺激をもらっています」。
SDGs、学生の柔軟なアイデア、老舗の調整力、県産品の活用など多くの“可能性の芽”を秘めた企画からどんな商品が生まれるのか。期待が高まっています。

「学生さんからもたくさん刺激をもらっています」と門脇さん
もちろん、コラボだけでなく、自社商品の開発にも積極的に取り組んでいます。現在は定番人気の三杯酢(ゆず、だいだい)と、湯布院産の玉ねぎを使った2種類のドレッシングの発売(2025年春予定)を控え、その調整に忙しい日々。門脇さんは「本当に美味しい自信作です。まずは事業継承した洋食屋ラパンのメニューにも取り入れたい」と意気込んでいます。

2021年に事業継承した老舗洋食屋ラパンで新商品の調味料を使うことも多いそう。
地域資源を活用。大きな可能性を秘めたメンマづくり
大分県は竹林面積、全国第二位。門脇さんが生まれ育った“竹中”もその名の通り竹が多い地域で、その竹の活用をした新たな商品づくりが始まろうとしています。
「まだ構想段階ですが、竹中の竹を活用した国産メンマをつくる予定です。数年前から福岡県糸島市で開発された国産メンマが密かなブームとなっており、その波は千葉や岡山にも広がっています。その波にぜひ乗りたいなって。竹林の管理で収入が得られるため、今問題になっている放置林の解決にもつながると考えています。実は竹中の竹林をボランティアで管理してくださっていた方が亡くなり、“このままだと竹中に放置林が生まれてしまう”という危機感もありました」。
放置林は土砂災害の原因になったり、生態系を崩したり、地域に大きな影響を及ぼします。地域資源の活用=地域課題の解決となる国産メンマづくりはまさに地域にとって “黄金の一手”といっても過言ではありません。

6代目取締役 門脇 裕一郎さん。話していると次から次に新しいアイデアが溢れてきます。
国産メンマづくりには4フェーズあり、1フェーズ:竹林の間伐整備、2フェーズ:間伐した竹の活用(バイオマス発電など)、3フェーズ:生えてきた竹を一次保管(塩漬け)、4フェーズ:塩漬けした竹を味付けして国産メンマとして販売。を段階的にこなしていくといいます。
「現在、2社で動いています。うちが担当するのは3、4フェーズ。もう1社は1、2フェーズを担当する予定で、現在、バイオマス発電を行う企業に掛け合っています。まだ始まったばかりですが、なんだかワクワクしますね」。
100人以上いる地権者(竹林のある山の所有者)との交渉、竹に関するデータ収集などクリアする問題は多いものの“可能性のかたまり”であるメンマの話をする門脇さんの目はキラキラと輝いています。
生まれ育った「竹中」をもっと多くの人に知ってほしい
メンマを考えた背景には、生まれ育った竹中をもっと多くの人に知ってほしい、盛り上げたいという想いもあるといいます。「私は今31歳ですが、竹中には同世代以下がほとんどいないんです。このままだと地域がどんどん衰退してしまう。今動かないとダメだなって。竹中が好きですし、地域のために奔走する父の背中を見て育ったので、“地域に貢献するのは当たり前”という感覚もあります。それに地域が元気になれば、会社も発展する。結局、全部つながっているんです」。
メンマづくりと同時に、竹中の美しい景観やお祭り、歴史、整備した竹林を使った観光客誘致も考えているという門脇さん。そのアイデアは尽きることがありません。
今回ご紹介した活動以外にも、大分県産のカボスを守り、発展させるためのカボス栽培への参入、 2021年に事業継承した老舗洋食屋ラパンの改革など門脇さんの挑戦はまだまだ続きます。
加えて“原点回帰”も目指しており、「私の代でもう一度ユワキヤ醤油の認知度を上げたい」と地道な営業活動、販路拡大にも取り組んでいるというから驚くばかり。その溢れんばかりのバイタリティはどこからくるのか…。受け継いだもの、ユワキヤ醤油の名を大切にしながらも常に一歩先の未来を見据える若き6代目・門脇裕一郎さんから今後も目が離せません。

ユワキヤ醤油で長年愛されてきた定番商品の数々

受け継いできたものを大切に、常に進化・変化を続ける『ユワキヤ醤油株式会社』。
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ユワキヤ醤油株式会社
PROFILE
- 設立年月
- 1950年5月
- 代表取締役
- 代表取締役: 門脇 正幸
- 事業内容
- 醤油・味噌等の醸造業
CONTACT
- 住所
- 〒879-7501 大分県大分市大字竹中3336番地
- TEL
- 097-597-0238
- FAX
- 097-597-0239
- メール
- info@yuwakiya.net
- HP
- https://yuwakiya.net/