

冷凍技術を軸に、大分県産フルーツの新たな可能性を追求株式会社ムクノ [ 大分県中津市 ]
- カテゴリ
- 清涼飲料
- その他食品関連事業
県下最大級の冷凍倉庫を持ち、冷凍技術を生かした食品加工や、商品の冷凍保管・流通管理を行う『ムクノ』。アイデアマンである社長の向野秀定さん、息子の雄一朗さんを中心に商品開発も積極的に行っており、特に大分県産フルーツを使用したスイーツに定評がある。 地域の農家や事業者と連携、新たな分野へのチャレンジと忙しい日々を過ごす雄一朗さん曰く「やりたいことが渋滞中」。整理しながら常に事業の成長、地域発展の糧となる“次なる一手”を考えている。

食品事業部 部長 向野 雄一朗さん
フルーツの美味しさをダイレクトに味わえる氷屋さんの「スムージー」「シャーベット」誕生
明治31年に氷屋からスタートした『ムクノ』は、いわば冷凍のプロフェッショナル。高い冷凍技術を生かした食品加工に定評があり、特に看板商品である急速凍結フルーツのピューレを使った生ジャムやアイスキャンディーが県内外で高く評価されています。
そんな同社はアイデアマンである社長の向野秀定さん、息子の雄一朗さんを中心に様々な新商品を生み出してきました。2024年夏にも試行錯誤の末、1年半の歳月をかけて完成した「氷屋さんのフルーツスムージー」、「氷屋さんのフルーツシャーベット」を発売。どちらも大分県産フルーツをメインに使い、急速冷凍技術、加工など全てにおいて『ムクノ』のこだわりがギュッと詰まった商品として注目を集めています。

スムージーとシャーベットの開発について熱く語る部長の雄一朗さん
スムージーは大分県オリジナルのいちご・ベリーツ、国東産キウイ、九州(大分、福岡)産イチジクの3種類。新鮮なフルーツと北海道産の甜菜糖のみで仕上げたナチュラル志向の方にぴったりの逸品で、口に入れると驚くほど鮮明なフルーツの味わいが広がります。
「うちの大きな強みは冷凍技術。原料のフルーツを調達して新鮮なうちに急速冷凍、自社 の大型冷凍倉庫で保管するため、解凍しても生と遜色ない味や色味、果肉感を楽しむことができます。質の高いフルーツを使用したスムージはまるでフルーツそのものを食べているかのような贅沢な味わいです」。
実はスムージー、元々は『ムクノ』が経営する道の駅なかつ内のショップ・ファームキッチンや催事で“果肉丸ごと超贅沢スムージー”として人気を集めていたもの。それを一般商品として流通させるために保存方法などを工夫し、ようやく販売に漕ぎ着けた自信作だといいます。

氷屋さんのフルーツスムージー。フルーツと甜菜糖のみで仕上げたこだわりの逸品。

道の駅なかつ内のショップ・ファームキッチンにはスムージーやかき氷など『ムクノ』の商品がずらり。
シャーベットは大分県を代表するカボス、ベリーツ、九州産不知火、佐伯産マリンレモン、国東産キウイ、九州(大分、福岡)産イチジクの6種類。スムージーと同じくフルーツの味がダイレクトに楽しめます。
「アイスキャンディーは牛乳を入れるのでどうしてもフルーツの味が薄くなってしまう。このシャーベットは農家さんが丹精込めて作ったフルーツの味をより鮮明に感じほしい、そんな想いで作りました」。
シャーベットは現在進行形で改良中。粘りを出すための添加物を変更し、よりナチュラルな商品へのステップアップを目指しています。

氷屋さんのフルーツシャーベット。新鮮なフルーツの贅沢な味わいが楽しめます。
原料に関しては天候や虫害などの外的要因によって仕入れが安定しないのが悩みの種。安定供給を叶えるためにも将来的には自社で原料生産を行う6次産業化を目指しているといいます。
「最終目標は大分県産品を中心にオール国産素材にすること。そのために新商品の開発はもちろん、既存商品の改良にも力を入れています。より多くの人に安心・安全・美味しい商品を安定的にお届けするために日々勉強です」。そう話す雄一朗さんの飽くなき探究心、溢れる情熱から今後どんな商品が生まれるのか。楽しみでなりません。
九州発の袋氷に“氷屋さんのこだわり”をプラスし全国へ
夏になるとスーパーやコンビニのアイスコーナーで必ずといっていいほど見かける袋氷。九州に住む私たちにとっては馴染み深い定番商品ですが、実は根付いているのは九州のみ。九州外ではほとんど知名度がないといいます。
「全国向けの商談会でうちが製造している袋氷を何気なく見せたら、バイヤーさんの反応が良くて驚きました。九州外の人には袋に入ったかき氷が非常に新鮮に映るようです。体をクールダウンしたり、喉を潤す効果も高いので猛暑が続く今の日本にぴったりですし、商材として大きな可能性を感じました」。
手始めにふるさと納税やネット販売を考えているという雄一朗さん。付加価値を高めるために “明治から続く氷屋”として3つのこだわりをアピールしていきたいと意気込んでいます。
一つ目は基本となる氷。九重山系の地下水層200mから汲み上げた天然水を2日間かけてじっくり凍らせる純氷は他では真似できないクオリティ。味はもちろん言うまでもなく絶品です。
二つ目は製法。効率的な現代的手法とは異なり、『ムクノ』は食べた後に“氷のスッキリ感”を味わってもらうために、昔ながら独自製法を貫いています。
最後の三つ目は蜜。従来のものに加え、ヘルシー志向、美味しさを求める方のために天然蜜を開発しました。現在はイチゴだけですが、今後、カボスやベリーツ、マリンレモンなど大分県産の天然蜜が増えていく予定です。
昔ながらの袋氷が『ムクノ』の力でパワーアップし、全国へと羽ばたこうとしています。

イチゴの天然蜜を使った袋氷。一口で鮮烈なイチゴが香る、ちょっと衝撃的な美味しさです。
冷凍技術を通じて、地域の農家や事業者をサポート
『ムクノ』のフルーツ加工はイチジク農家から「規格外品をどうにかできないか」と相談を持ちかけられたところから始まりました。現在も“全て無駄なく使う”モットーに、熟しすぎて地面に落ち、加工にも使えないフルーツを発酵させてお酢を作るなど、様々なチャレンジを行っています。
「規格外フルーツで作ったお酢はすでに自社のドレッシングに使用しています。ただ、お酢自体に大きな特徴がある訳ではありません。お酢を商品化するためには味わいに特徴やストーリーを持たせ、市場価値を高める必要ある。そのために現在、外部の協力を得ながら発酵について勉強中です。発酵の知識をもっと深めれば、お酢以外、例えばお酒などにも応用できるかなと考えています」。
応用範囲が広がれば、農産物の廃棄ゼロ・全量買取も夢ではありません。農家にとっても大きな助けとなる次なる一手に期待が高まっています。
また、『ムクノ』は冷凍保管業でも地域の生産者や事業者をサポートしています。
「原料や商品を長期保管できれば様々な可能性が広がります。規模は問いません。地元の個人経営の飲食店やケーキ店、イベント主催者などからのご依頼も多いです」。
“地域、生産者とともに”―『ムクノ』の原点は今もしっかりと根付いています。

県内最大級の冷凍倉庫(1,000坪と2,000坪)で、農産物、海産物、お菓子、ケーキなど様々な商品を保管しています。
昨年、最新の大型急速凍結装置を購入し、1日に凍結できる量が約200kgから約2tへと大幅アップ。今後は凍結のみの受け入れも増やす予定だといいます。
「急速凍結の受け入れに関してはすでに進んでいる商談もあります。他にも、シャーベットのブラッシュアップ、既存商品のリニューアル、発酵の勉強、健康に気を使う方向けの冷凍弁当、介護用スムージー、冬季商品(冷凍お鍋セットなど)の開発とやるべきこと、やりたいことが渋滞中です。まずは整理が必要ですね(笑)。」
最後に今後の展望を語ってくれた雄一朗さん。想いを形に―私たちをあっと驚かす新商品が生まれる日もそう遠くないに違いありません。
この企業の特集記事はこちら
株式会社ムクノ
PROFILE
- 設立年月
- 1950年8月
- 代表取締役
- 向野 秀定
- 事業内容
- 製氷業/冷蔵倉庫業/食品製造業/冷凍食品製造業/アイスクリーム製造業・販売業
CONTACT
- 住所
- 大分県中津市東浜1013-4 (中津本社工場)
- TEL
- 0979-22-0440
- FAX
- 0979-24-1227
- メール
- nakatsu-office@mukuno.co.jp
- HP
- https://www.mukuno.co.jp/