関あじ・関さばと、共に歩んで40年富士見水産 [ 大分県大分市 ]
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『富士見水産』は、「関あじ・関さば」のプロフェッショナル。大分県漁協佐賀関支店認定仲買であり、佐賀関漁協に登録している漁師が生きたまま一本釣りしたものを専門に取り扱っています。漁獲量の低下や漁師の高齢化などにも悩まされる近年は、魚をロスなく使う加工品の製造にも着手。急速冷凍した関あじや関さばの「りゅうきゅう」、レトルトの「関ぶりあら煮」など、人気商品も生まれています。
代表取締役 姫野透さん
関あじや関さばなど 一本釣りした“関もの”専門
『富士見水産』が扱うのは、日本で初めて“ブランド魚”として認証された「関あじ・関さば」。平成8(2006)年に、地域団体商標に登録されています。以前から、大分県内では「関(せき:佐賀関)の魚はおいしい」とよく知られていたのですが、その理由は、佐賀関沖の「豊後水道」にあります。この水域は瀬戸内海と太平洋の水塊がぶつかり合い潮の流れが早く、“速水(はやすい)の瀬戸”とも呼ばれており、海底の地形もとても複雑でえさも豊富。特殊な潮流と地形、豊富なえさのおかげで、身が十分にひきしまり、大型で脂がほどよくのったおいしい魚が育つのです。そんなおいしい魚の中でも、関あじや関さばと名乗れるのは、佐賀関漁協に登録している漁師が一本釣りで生きたまま釣り上げたマアジとマサバだけ。潮の流れの速い漁場で熟練の漁師が命がけで一本釣りし、鮮度管理にも細心の注意を払ったものだけが、晴れて「関あじ・関さば」となるのです。
生きたまま釣り上げられた関さば。1本釣りで傷もなく、美しい姿のままで『富士見水産』まで運ばれる
佐賀関内でも、関あじ・関さばを保有する生簀の多さは最大。台風などの気象条件にも左右されにくく、安定して出荷することができる
社名の由来は別府の病院?
『富士見水産』が創業したのは、昭和56(1981)年。佐賀関出身の姫野新さんが立ち上げました。しかし、その成り立ちは少し変わっています。
「親父がトラック1台で始めたんですが、名前は、別府にあった『富士見病院』から来てるんですよ」と教えてくださったのは、父親から家業を継いだ姫野透さん。「お袋が富士見病院で総婦長をしよってね。親父も、院内の手伝いなんかをしていたんです」。そんな時、病院の関係者の方が料理店を開くことになり、佐賀関出身の新さんに白羽の矢が。「院長さんが『姫野くん、佐賀関の魚の段取りをしてくれんかな』って。それが、富士見水産の発足のきっかけなんです」。透さんも2年後から父親の仕事を手伝い始め、「もう40年はみっちりこの仕事をしてますね」と笑う、関もののベテランです。
「親父は佐賀関出身で器用貧乏な人でね、建設業とか自動車修理とか、とにかくいろいろした人だった」と語る2代目の透さんは、関あじ・関さばのプロフェッショナル
できるだけ魚にストレスをかけないよう、いけすからの搬送にも最新の注意を。いけす周辺には、創業者・新さん考案のオリジナル運搬設備もたくさん
創業後すぐに始めた活魚輸送は、現在も継続中。当時は専用のトラックもなく水槽も手作り。酸素ボンベを使いエアーを送っていたそう
一本釣りの関あじ・関さばは 特殊な“面買い”で鮮度を守る
関あじ・関さばの特別なおいしさを守るため、もっとも気にかけるのが鮮度。一本釣りで釣り上げたらすぐに船の中のいけすへ入れ、傷やストレスで味が落ちないよう注意を払いながら、生きたまま佐賀関の漁港へ届けられます。買い取りの方法も、「面買い(つらがい)」と呼ばれる特殊なもの。「陸にあげて計量することによって鱗がはげたりストレスで死んでしまうこともあるから、計量は目検討。魚を痛めないように、水から水へ運ぶんです」。それは、船のいけすから網で魚をすくい、海の中に作られた魚種ごとのいけすへダイレクトに運ぶ、ほんのわずかな瞬間に計測するという神技。買い取りにも、熟練の技が必要です。
港に届けられた魚はいったん港の網いけすで落ち着かせ、出荷前に一匹一匹丁寧に処理。神経抜きを施し、包丁を入れて脊髄を切断、血を抜いて氷を入れた海水で冷やす特殊な「活けじめ」をします。これらもすべて手作業。高度な技術と手間が必要になりますが、この作業をするからこそ活きの良さを維持できるのです。もともと特殊な海域で身が締まりおいしく育った健康な魚を、細心の注意を払って運搬し、丁寧に処理。青魚特有の臭みなども少なく、抜群の鮮度とおいしさが家庭や店舗に届けらます。
いけすから魚を選んで出荷する様子。水揚げの“面買い”と同じく、魚にできるだけストレスを与えないよう網ですくってすぐに、水のはったケースへ
「活け締め」や刺身用に切り身にする魚は、出荷直前にいけすから水揚げ。熟練の技術で、素早く丁寧に処理される
りゅうきゅうを商品化 オリジナルのタレも人気に
現在は、アルコールに漬け瞬間冷凍させるリキッドフリーザーも活用。3枚おろしや切り身にしたものも、鮮度を保ったまま流通させることができます。13年ほど前からは加工も開始。最初の商品は、大分の人気郷土料理「りゅうきゅう」でした。イベントの出店などで作っていたもので、商品化するに当たり、タレも「人工甘味料を使わず、素朴で純粋なものを作りたい」と県内の醸造メーカーに依頼。このオリジナルのタレも人気商品になっています。
関あじ、関さば、関ぶりのりゅうきゅうは、近隣の道の駅にも提供。冷凍商品がそのままお土産品として人気なだけでなく、このりゅうきゅうを使った丼も食堂の目玉メニューになっています。「厨房で魚を一から捌くとなるとその分のスペースも必要になるし、何より余れば食品ロスになる。この冷凍パックだとその心配がいりません」。味はもちろん、調理が簡単なことやロスが出ないことも喜ばれているとか。「アルコール凍結だとね、浸透がすごいんですよ。味もしっかり付くから、丼にのせたらめしがさらにおいしくなるんです。それは冷凍の利点でもありますね」と、透さん。県内のうどんチェーン店では「関ぶりのりゅうきゅう丼」が冬の季節限定で登場し、ヒットメニューになっているそう。
刺身用の切り身やりゅうきゅうは、リキッドフリーザーを使い瞬間冷凍。肉質や細胞を崩さすに冷凍できるので、鮮度も保て、解凍時のドリップも少ない
関あじ、関さば、関ぶりの3種類ある「りゅうきゅう」は、3〜5分の流水解凍で食べられる手軽さも魅力
解凍してそのままほかほかごはんにのせれば、あっという間にりゅうきゅう丼が完成。新鮮な魚の食感も残さず堪能することができる。オリジナルのタレも人気が高い
おいしい関ものの魚を いろんな食べ方で届ける
関あじ・関さばの鮮度のよさや食感、味わいを堪能してもらうには刺身が一番。3枚おろしにお頭もつけた1匹丸ごとを冷凍で届ける「関冷刺」は、「家庭でもお頭付きの刺身が味わえる」と話題性も抜群です。
しかし現在は、漁師の高齢化や漁獲量の減少に伴い、関あじ・関さばがより高価になっているのも事実。刺身やりゅうきゅうなど身を生で食べるだけでなく、骨やアラも生かして商品が作れないか?と、取り組み始めました。
「関ぶりあら煮」は、濃いめの味で炊き上げたあら煮をレトルトパックにつめて加圧。常温で持ち運びもしやすく日持ちするので、お土産として人気に。素朴で愛らしいパッケージも好評だそう。関あじや関さばの骨やアラも、レトルト加工をして細かく粉砕しコロッケに混ぜ込んだり、じゃこ天に入れたり。「アラや骨には、コラーゲンや旨味がいっぱい詰まってるんです。じゃこ天にアジを入れると、めちゃくちゃ味がよくなる」。関あじや関さばの身も、刺身やりゅうきゅうだけでなくフライや開き、カレーと、商品数を増やしています。
まずは刺身で締まった身の食感や旨みを堪能してほしいが、今後は加工品の数も増やしていく予定
最近は関ぶりの商品も人気。「関ぶりのしゃぶしゃぶ」は、大分市のふるさと納税品や地元デパートのギフトブックにも掲載させれている
関あじ・関さばを もっと多くの人に食べてほしい!
最新作は、「関あじのだし塩」。関あじをアラや骨も含めて粉末化して、塩と調合しています。これだけで十分おいしく、調味料としても万能。これでおむすびを握れば、「関あじおにぎり」が完成します。「息子やその友達も、これを使ったおにぎりを一度食べたら、もうやみつきになっているんですよ」。
「おいしい」ことは証明され、実際に人気の関あじ・関さばや、関ぶり、鯛などの一本釣りの“関もの”の魚。しかし、今後は一層手に入りにくくなり、より貴重で高級になることが予想されています。そんな中で、骨やアラなどのロスをできるだけ少なくしたいと試行錯誤中。加工品作りにも意欲的です。
そのおいしさに揺るぎない自信があるからこそ、大分のブランド魚「関あじ・関さば」への愛も人一倍。「関ものの魚のおいしさを、もっと多くの人に届けていきたい」。この思いがすべての原動力になっています。
切り身以外のあらや、これまでは商品にならなかったような小さなアジなども、有効活用。関あじや関さばの旨みを活かした商品作りを目指す
右は関あじのアラや骨も含めて粉末化したもの。「粉末だから用途も広がるんですよ。僕は、せんべいに混ぜ込んでも面白いのかな、と思っているんです」と姫野社長
富士見水産
PROFILE
- 設立年月
- 昭和56年8月28日
- 代表取締役
- 姫野 透
- 事業内容
- 鮮魚の市場出荷及び地方発送
開き、りゅうきゅう、レトルト等の加工商品製造
CONTACT
- 住所
- (本社)大分県大分市細土井ノ内1663-1 (佐賀関現場)大分県大分市佐賀関幸ノ浦
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