伝統+挑戦+革新。進化し続ける調味料富士甚醤油株式会社 [ 大分県臼杵市 ]
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九州を中心に20箇所の拠点を持つ調味料の総合メーカー。スローガンは「安心を、いただきます。」。味噌・醤油、それらを原料にした加工品(ドレッシング、焼肉のたれ、ポン酢など)の開発・製造・販売を行うほか、スーパーやコンビニのPB商品、OEMも数多く手がけている。 近年は、「人と環境にやさしい商品づくり」をモットーに、地球環境に配慮した商品開発に注力。2025年夏には、プラスチックを大幅に削減できる紙パックラインを備えた加工品の第二工場が完成予定。
代表取締役社長 渡邉 規生さん
大分県を代表する老舗調味料メーカー
明治16年創業、140年以上の歴史を刻む富士甚醤油株式会社。伝統を受け継ぐ味噌・醤油のほか、それらを原料にしたドレッシング、焼肉のたれ、ポン酢など幅広い加工品の開発・製造・販売を行っており、印象的なロゴマークと共に“フジジン”の名は多くの人に親しまれています。また、スーパーやコンビニのPB商品、OEMも数多く手がけているため、九州圏で暮らした経験があれば富士甚醤油の味を知らないという人の方が珍しいかもしれません。
「曽祖父が家業であった漁網販売のついでに自家製の味噌・醤油を売り始めたのが最初です。祖父の代に九州で初めて焼肉のたれを発売、父の代になると味噌・醤油の消費が減少傾向に転じたこともあり、ドレッシングなどの加工品の生産に本腰を入れるようになりました。今は売り上げの4割以上を加工品が占めています」そう話すのは5代目の渡邉社長。伝統の製法・味を大切にしながらも、現代のライフスタイルに合わせた商品の開発やSDGs 、特に環境問題の解決に積極的に取り組んでいることで知られています。
醤油、味噌、焼肉のたれ、めんつゆ、ドレッシング、からあげの素など商品は1000種類以上!富士甚醤油を代表する醤油「うまくち (中央)」は九州で売り上げNo.1の実績を誇っています。
味噌製造工場の様子。味噌は濾過工程がないため、異物混入などに細心の注意をはらいながら作業を行なっています。
目指すのは、人と環境にやさしい商品づくり ―「ジップみそ」誕生秘話―
地球環境に配慮した商品づくりは、企業の責任、使命だと考えている渡邉社長が現在、最も注力しているのが脱プラスチック。商品の性質上ゼロすることはできませんが、少しでも削減しようと奮闘しています。
「最初に考えたのは味噌の容器を紙にすること。3年間色々試して理想に近いものはできたんですが、どうしてもコストが合わなくて…。最終的に紙ではなくアルミを採用しました。もちろん、プラスチックも使われていますが、その量は従来の容器に比べ、半分以下に抑えられています」。試行錯誤の末、完成したアルミ容器の味噌は2023年秋、『ジップみそ』として発売されました。
環境にやさしいアルミ容器の『ジップみそ』
環境にやさしいアルミ容器の『ジップみそ』には、現代のライフスタイルに合わせた様々な工夫も盛り込まれています。一番のポイントは「味噌の袋にジップがあったら便利なのに」という社員のつぶやきをヒントに、味噌商品に関しては業界初となるジップ付きの小袋を採用したこと。核家族化、食の欧米化が進むにつれ、「大容量の味噌は使いきれない」「開封後の味噌袋(ガゼット袋)の管理が大変」「味噌カップは蓋が外れやすいし、量が減っても冷蔵庫の中で場所を取るから嫌だ」等、味噌に対する不満の声が増えており、450gと程よい量で扱いも簡単な『ジップみそ』はまさに時代が求める商品といえます。
また、容器が不透明であることも業界に衝撃を与えました。「味噌は時間の経過と共に熟成が進んで色が変化するため、色が見える透明の容器を使うことが業界の常識とされてきました。でもアルミは不透明で中が見えない。不安に思っていたときに、偶然、妻が買ってきたばかりの味噌の色が濃くなっている(熟成が進んでいる)のを見たんです。そこで、あれ、もしかして消費者は味噌の色を気にしないのかなって。業界の常識が必ずしも消費者の常識ではないと気づき、不透明にする決断ができました。不安もありましたが、発売から現在に至るまで袋に関するクレームは一件もありません」。アルミの袋は酸素や光を遮断するため、味噌の鮮度保持にも有効。いいこと尽くしだといいます。
『ジップみそ』は渡邉社長のものづくりへの情熱、挑戦心、柔軟な姿勢が生み出した次世代の商品といえるのかもしれません。
小さなヒントを見逃さず、良いものはすぐに取り入れる。長年の常識を覆すことも厭わない。『ジップみそ』は渡邉社長のものづくりへの情熱、挑戦心、柔軟な姿勢が生み出した次世代の商品といえるのかもしれません。
発売後、CMが放映されると同時に多くのお問い合わせが寄せられた『ジップみそ』。その後も「一人暮らしでも気軽に使える」「場所を取らなくていい」「パッケージが可愛い」とクチコミで人気を広げ、順調に売り上げを伸ばしています。
今は手作業で充填を行なっているジップみそ。技術開発部の村上さんは「このまま順調に売り上げを伸ばし、専用機械を導入することが目標です」と意気込んでいます。
2025年夏、環境に配慮した新工場が完成
昭和48年に味噌製造工場(ISO22000認証取得)、昭和59年に醤油製造工場(JFS-B認証取得)、平成2年に加工品の製造を行うサンアス工場(ISO22000認証取得)を設立。それぞれ外部認証を取得するなど、食の安全、品質にも徹底的にこだわっている富士甚醤油株式会社。2025年夏には、そこに環境への配慮が加わった新工場(加工品の第二工場)の完成が控えています。
「新工場には、主力商品の一つであるドレッシングのペットボトルラインと、環境に配慮した紙パックラインをつくる予定です。紙パックは組み立てて、液体を入れて…と手間がかかるので正直、生産効率は悪い。でもそれを上回るメリットがあると考えています。そのひとつが配送効率。組み立て前の紙パックはぺちゃんこですから、一度に運べる量はペットボトルの約20倍。配送回数が1/20ですめば、配送コストだけでなく、限りある燃料やCO2の排出量を削減することができます。地球環境を考える企業として紙パックの導入は必要不可欠だと考えています」。コスト、生産効率の面から調味料の紙パックラインを持つ工場は全国でも希少。しかし、渡邉社長は子ども達の未来のために“当たり前のこと”として実践しています。
新工場の製造ラインはドレッシング「ゆふいんの森」等のペットボトルライン、紙パックラインの2つ。紙パック商品の詳細はまだ未定ですが、大分県産の椎茸を原料にした植物性のダシを使うなど、特徴あるものにしたいといいます。
新工場の敷地内に公園や富士甚醤油株式会社の歴史を知ることのできる記念館をつくり、市民の憩いの場にするという構想もあるそう。こちらは創業まもない頃のチラシ。驚くほど状態がよく色鮮やか。他にも貴重な資料がたくさん残っています。
消費者に寄り添い、多くの人に愛される商品を
環境への配慮は紙パックだけではありません。植物性のダシを使った商品の研究・開発にも取り組んでおり、それがアレルギー対応にもつながっています。
「例えば、めんつゆ。通常はカツオ・昆布・椎茸と3種の旨味成分を使っているんですが、椎茸のみの商品も製造しています。動物性由来の成分にアレルギーがある人はもちろん、甲状腺に問題があり、昆布の摂取が難しい人にも喜ばれています。“ずっと探していたんです”そんなお声をいただくと本当に嬉しいですね」そう話すのは企画部の児玉さん。消費者からアレルギーに関するお問い合わせがあった際は、問題ない商品に付箋を貼ったカタログを送るなど、細やかに配慮しているといいます。
どんなに企業が成長しても、規模が大きくなってもお客様に寄り添う姿勢を忘れない―100年前から変わらない真摯な姿勢こそが富士甚醤油が愛され続ける理由なのかもしれません。
富士甚醤油株式会社
PROFILE
- 設立年月
- 明治16年創業、大正13年6月14日設立
- 代表取締役
- 渡邉 規生
- 事業内容
- 醤油・味噌・加工食品の製造販売
CONTACT
- 住所
- 大分県臼杵市大字末広字黒丸162-1
- TEL
- 0972-63-3111
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