麦の穂が揺れる宇佐平野で、土の香りのする商品作りを宇佐パン粉有限会社 [ 大分県宇佐市 ]
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宇佐平野で小麦の栽培から加工まで手掛ける『宇佐パン粉』。「安心・安全の商品づくり」と「お客様のために」をモットーに、日本全国で使われている様々な種類のパン粉、天玉、本格派ピザまで魅力ある商品づくりを進めています。
代表取締役社長 岩井正久さん
地域とともに国産小麦作りに取り組む
解凍したらオーブンやオーブントースターで5、6分。チーズが溶けてこんがり焼けたら、出来上がり。こんなに手軽なのに、味わいは驚くほど本格派。一度食べると、そのおいしさに驚いてしまうかもしれません。そんな冷凍ピザを作っているのは、『宇佐パン粉』。社名通り、50年前、パン粉の製造からスタートしました。
もちろん、パン粉は現在も変わらず会社の主力商品。家庭用から業務用まで、日本全国で使われている様々な種類のパン粉を製造し、スーパーマーケットやドラッグストアや、都内の有名ホテル、安心・安全な商品を扱う生協なども、取り扱っています。
そんな『宇佐パン粉』がテーマに掲げるのは、健康。「安心・安全の商品づくり」と「お客様のために」をモットーに、魅力ある商品づくりを進めています。そんな中、10年前からはじめたのが、契約農家による自社専用の小麦作りでした。「小麦を、(会社のある)宇佐の農家の方々にご協力いただいて、宇佐で育てる。『土の香りのする商品作り』を目指しました」と、岩井正久社長。
わずか20町歩(約1980アール)から始まった小麦作りでしたが、地元のJAの協力もあり、10年経った今では240ヘクタールにまで拡大。
年間、約720トンの小麦が収穫できるまでになりました。現在は、58名の農家さんが、パンに向いている小麦の品種「ミナミノカオリ」を育てています。
「58名の生産者の方々の顔が見える、小麦粉作りをしています。北の大地は北海道を刺しますが、南の大地は九州ですよ、という気持ちも込めて『南の大地の会』という名前をつけてやっているんですよ」。
もともと会社のある宇佐市は、山地の多い大分県の中で「宇佐平野」と呼ばれ、農業が盛んだった地域。国東半島宇佐地域は、世界農業遺産にも認定されています。
11月に種を撒き、6月には刈り取り。食育も兼ね、近隣の小学校の子どもたちにも、種まきや麦刈りを体験してもっているそうです。初夏になると、色づいた麦の穂で黄金色に染まる畑。そんな豊かな宇佐平野で、顔の見える生産者が育てた宇佐産の小麦から、おいしいピザやパン粉が作られています。
とはいえ、宇佐で採れる小麦粉は年間500トンほど。『宇佐パン粉』が年間に扱う小麦粉は約5000トンですから、とてもとても、全ての商品を賄える量ではありません。そこで誕生したのが、冷凍ピザでした。
きっかけは、地元スーパーのバイヤーから「オリジナルピザを作れないか」と、声をかけられたこと。実は、30年ほど前からイタリアンのシェフとコラボし、百貨店の催事で販売する冷凍イタリアンピザの製造を行っていました。その実績を買われたのです。
そこで、国産の中でも地元・宇佐で採れた小麦を使った商品開発が始まりました。しかし、地元産の小麦「ミナミノカオリ」だけを使ったピザ生地づくりは難航します。宇佐産の小麦粉と水、イーストと塩のみを使い、本場のナポリピッツァと同じ製法で作っていたのですが、うまくいきませんでした。本場に近いナポリピッツァに仕上げるには、強い火力で短時間に焼き上げる必要がありますが、冷凍食品ではそれが難しかったのです。パリッと焼き上がらずにフニャヌニャの生地になってしまったり、逆に焼きすぎて硬くなってしまったり。試行錯誤や工夫を重ねたどり着いたのが、半焼成。実は、解凍してそのままでも食べられるくらいに、火を通しています。家庭では、チーズが溶けてこんがり焼ければOK。トースターで5、6分焼くだけという手軽さにも、繋がりました。
こだわっているのは、素材だけではありません。「お店の味」が楽しめるよう、生地は、1枚1枚“手延ばし”しています。そうすることで、生地の中に気泡が入り、焼き上がった時の“モッチリとした食感”を実現させるのだそう。その分、大量生産はできません。しかしそれが、お店で味わうような本格的な味わいにつながっているのです。
モッツァレラとパルメザンの2種類のチーズを使った「バジル」のバジルソースは国東産、ピリッとした柚子胡椒が隠し味の「豊後鶏の炭火焼ピザ」の香りのいい豊後鷄の炭火焼は、宇佐で作られたもの。具材には、地元の地域資源が生かされています。
最近は、福岡の老舗明太子屋『福太郎』とコラボした、明太子ピザも商品化。社内で一体となり、試食や改良を重ね、完成させました。現在、明太子を含めると7種類のピザがラインアップ。今後は、家庭で好みの具材を載せられるよう、生地だけの販売なども構想中だとか。宇佐産の小麦で作ることはできませんが、ソースまで塗った業務用ピザなども作ることができるそうです。
宇佐の大地から生まれる、モッチリ生地の本格派ピザ。今後、まだまだ需要が高まりそうです。
手軽なのに、味わいは驚くほど本格派の冷凍ピザ
パンに向いている小麦の品種「ミナミノカオリ」
もともと農業が盛んだった「宇佐平野」
地元・宇佐で採れた小麦を使った商品開発が始まった
トースターで5、6分。チーズが溶けてこんがり焼ければOK
生地は、1枚1枚“手延ばし”している
ピリッとした柚子胡椒が隠し味の「豊後鶏の炭火焼ピザ」
宇佐パン粉有限会社
PROFILE
- 設立年月
- 1970年
- 代表取締役
- 岩井 正久
- 事業内容
- パン粉、天玉、ピザ、冷凍パンの製造
CONTACT
- 住所
- 宇佐市大字長洲927-4
- TEL
- 0978-38-0274
- FAX
- 0978-38-2298
- HP
- http://www.usapanko.jp/