対談
バジルソーセージ
今回コラボしたのは、国東市でバジルの栽培・加工を行う『くにみ農産加工』と、大分市で食肉の製造・卸売・加工を行う『ミートクレスト』。2社が出会ったことで、おいしいだけでなく、あらゆる面で付加価値の高いバジルソーセージが生まれました。 お話は商品についてだけでなく、コラボによる新たなストーリーの創造、そこから実現するコト売りの可能性、全国に打って出るために必要な認証取得の重要性と大きな広がりをみせました。大分の食品業界の未来を考える2社の代表による熱い対談をぜひご一読ください。
代表 吉丸栄市さん
くにみ農産加工有限会社[大分県国東市]
20年以上前から、国東半島で、バジル栽培とバジルを使った商品づくりに取り組んでいる『くにみ農産加工』代表。「かけがえのない存在になる」という方針を掲げ、農業のシステム化にも取り組み、地域の農業継続と拡大を支えています。
代表 清田浩徳さん
株式会社ミートクレスト[大分県大分市]
大分県産牛を中心に、県外の牛肉・豚肉・鶏肉の精肉や加工品を多数取り扱う『ミートクレスト』代表。原料の調達、加工、販売までを一貫して管理していることから、さまざまなニーズに応じた柔軟な提案が可能。大分県産肉の普及にも尽力しています。
バジルソーセージが生まれた経緯を教えてください
国東市のふるさと納税の返礼品でうちの県産豚肉を使ったソーセージがよく出ているという話を聞き、「せっかくなら国東市の食材を使ったものが作れないか」と考えたのがきっかけです。
でも、なかなかピタッとハマるものが見つからなくて…。県産かぼすやみかんなど色々考えてはみたのですが、すでに他がやっていたり、ロットが小さすぎて使えなかったり、そもそもソーセージに合わなかったり。どうしようかと悩んでいたときに、くにみ農産さんのバジルの話を聞いたんです。
以前、ミートクレストさんのレトルトハンバーグにうちの玉ねぎソテーを使っていただきましたが、バジルについても知っていたんですか?
実はお恥ずかしい話、バジルついては全く知らなかったんです。でも、お話を聞いて、ありきたりではないバジルという素材、ソーセージとの親和性…まさにこれだ!と思いました。バジルペーストという加工品があったのも大きかったですね。
ふるさと納税のホームページを拝見したのですが、ミートクレストさんのこだわりに加え、国東半島の地域性、バジルの特徴、作り手の想いなど、コラボの特色がしっかり表現されていてすごく魅力的に仕上がっていると思いました。
ホームページを見る人は実際に試食できる訳ではないので、商品の背景にあるストーリーを伝える手法って、非常に有効なんですよね。購買意欲を煽るというか。
そうですね。うちは元々牛肉屋ですから、牛を仕入れて、お肉にして、スーパーに納めるのが主な仕事。でもそういう商品にはなかなか付加価値がつかない。
だから近年、加工品の方にも力を入れているんですが、今回のような県産素材同士のコラボが生み出す付加価値は想像以上に大きいと感じました。
実は、私たちは“最終商品は作らない”と決めています。だから今回のようなコラボは非常にありがたいんです。
それはなぜですか?
今回使っていただいた主力商品であるバジルペーストは、最高の気候・立地で育てたバジルの柔らかい新葉のみを手摘みし、香りの揮発を抑えるためにほとんど2、3時間のうちに加工しています。そのため、味・香り共にお客様が食べて、『世界一美味しい』と言って頂けるものであると自負していますが、製造には手間がかかる。
最終商品にまで手を出してしまうとそこに人手や時間、場所を取られてしまい、私たちの目指す“どこにも負けない戦略原料”が作れなくなってしまうんです。
最終商品を作らない分、「うちの原料を使えばそれだけで他と差がつきますよ」と自信を持っていえるものを提供したいと考えています。
バジルソーセージを実際に試食してみてどうでしたか?
後味がいいですね、後から旨味が追いかけてきます。うちのバジルは旨味にこだわっていて、特に後味(=うまみの余韻)を意識しているんですが、このソーセージにはそれがうまく表現されていると思います。
それに、ある程度脂分が入ってジューシーに仕上げられたソーセージって、通常後味に少しクセが残る場合が多いんですが、これはそのクセをバジルの旨味でうまく覆っている。配合割合が絶妙なんでしょうね。
バジルペーストの配合割合は3%、4%、5%と試して、最終的にバジルの風味が強すぎず、弱すぎず、一番バランスよく感じられる5%に決めました。
あとは、バジルの味を壊さないようにノースモークで仕上げたり、バジルの風味をしっかり感じつつ、お肉の旨みも十分伝わる肉の配合にしたり、ですね。それは現場のスタッフの判断なんですが。
作り手の想いも入っているんですね。我々の意図がここまでしっかり反映されていることに驚いています。
今後は、どんな展開をお考えですか?
今、三次産業の小売に携わる方たちはモノ売りではなく、コト売り、つまり商品の背景にあるストーリーを伝えることが大切だと盛んにいっています。僕は今回のようなコラボはまさにそのコト売りにぴったりだと思うんです。
それぞれ単一の会社にももちろんストーリーはあるんですが、コラボするとさらに深みが出る。それをそのままチラシだったり、ポップだったり、店舗で表現できるくらいの提案力をつける必要があると感じています。
お客様に届けるストーリーを我々から提案するという訳ですね。
ええ。だから、私が企画委員を務めるおおいた食品産業企業会でも、みんなでコト売りをしようと動いています。
実は、食品会社同士でこういう動きをしているのって九州では大分県だけなんですよ。
今回のコラボはあくまできっかけ。いろんな方々の知恵と経験を借りながら、これからこの動きを広げていけたらと思っています。
うちは全国規模の大きなロットは受けられませんが、その分、細かいご要望に答えることができます。皆さんと一緒にいろんな可能性を追求していきたいですね。
OEMで大手コンビニチェーンのエリア限定商品をつくっているので、こちらからご提案できることもあると思います。
あと、私が大分県食肉事業協同組合連合会の会長をしている関係で、県内に60数件あるお肉屋さんを通じて、学校給食にウインナーを入れているんですが、「ただのソーセージを入れても仕方ない」ということで、乳卵抜きのアレルゲンフリーにしたり、栄養士さんから子どもたちに鉄分が足りないという話を聞いてさつまいもペーストを練り込んだ鉄カルウインナーを作ったり、いろんな挑戦をしているんですね。そういった部分にもご協力いただけると嬉しいです。
スープやソースの原料も作っているので、色々ご提案できると思います。
ありがとうございます。なんだかワクワクしますね。
うちはバジルの路地物に関しては生産量日本一。こだわりも知られるようになって、大手コンビニや外食チェーンからお話を持ちかけられることも増えました。その際、今回のようなストーリーのある県産商品ぜひご紹介していきたいと思っています。
ただ、そういう大きな話をするためには会社の体制を整えておくことも大切だと痛感しています。
会社の体制というと、具体的にどういったことを指すのですか?
食品安全マネジメントシステムに関する国際規格ISO 22000や、その上位に当たるFSSC22000、昨年6月に義務化された食品衛生管理の国際的手法HACCPなどの認証を取得することが非常に重要であると考えています。
うちはFSSC22000を取得し、国際的な基準で加工を行なっていますが、サプライチェーンを意識して、大分県から全国へ発信していく場合、この認証が大きな強みになるんです。地方の企業が全国に打って出るための通行証になるというか。
その通りだと思います。うちは大分工場も、小規模な鹿児島工場もISO 22000を取得していますが、それだけで最初から一定の信頼を得ることができます。詳しく説明しなくても“そちらと同じ目線・考え方で、同じように配慮して仕事をしていますよ”っていうのが伝わるんです。これは非常に大きなメリットだと思います。
逆に認証がないと、最初の入り口にすら立てない場合も多い。お金はかかりますが、企業が殻を破って成長していくためには、必要不可欠な土台になるものだと考えています。
今回のコラボに関しても、くにみ農産さんは私たちよりさらに高いレベルのFSSC22000を取得しているので、心配する要素が一切ありませんでした。
先ほど、大手コンビニや外食チェーンから声がかかるというお話がありましたが、それもやっぱり認証があってこそではないでしょうか。
最終的にそれがお客様のためになるということも忘れてはいけないと思っています。
国や、保健所などの関係機関だけでなく、お客様に説明責任がある、そしてそれが真の満足を生むということを肝に銘じて、自ら動くことが大切です。
認証取得がスタンダードになれば、大分の食品業界は大きく変わっていくはずです。
おおいた食品産業企業会でも、企業へそういう働きかけを行なっていきたいと考えています。
ミートクレストの人気商品であるハンバーグ。地元の食材を使いたいという思いから、くにみ農産加工の玉ねぎソテーが使われています。
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くにみ農産加工有限会社
- 代表取締役
- 代表 吉丸栄市さん
- 事業内容
- 農産物の加工に関する事業、輸出入物産品の仕入・販売に関する一切の事業、農業技術の研究及び指導、農業経営並びに運営に関するコンサルティング