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フードスタッフ×有限会社由布院散歩道
対談

ポポーアイスクリーム

食品産業企業会では、所属する企業同士がコラボし、新たな商品を開発する動きも盛んです。今回は、ともに由布市に会社をもつ2社が、お互いの得意分野を生かして開発した「ポポーアイスクリーム」についてのお話です。 コラボしたのは、自家栽培や契約する農家から届く果物でジャムを製造する『有限会社由布院散歩道』と、県内の多くの企業に依頼されアイスクリームを開発している『フードスタッフ』。作ったのは、あまり聞き馴染みのない果物「ポポー」を使ったアイスクリーム。ポポーのおいしさに惚れ込んだからこそ生まれた、2社だからこそできた商品です。

話し手

代表 溝邉利江さん

有限会社 フードスタッフ[大分県由布市]

道の駅やレストラン、高級ホテルなど、様々な業種の企業から依頼され、PB・OEM・オリジナルアイスクリームの開発・製造をはじめ、ギフト・土産用の菓子製造、調味料の開発など、幅広い 食 を創造しています。

話し手

代表 村田武さん

有限会社 湯布院散歩道(食工房風曜日)[大分県由布市]

自家栽培や契約する農家から届く季節の果物で、自社ブランドをはじめ、多彩な企業のオリジナルジャムを製造。珍しいフルーツや旬の素材そのままの贅沢な味を楽しめるジャムは、高い評価を得ています。

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今回、「ポポー」という果物を初めて知ったのですが、どんな果物な んですか?

溝邉さん

完熟した実は、マンゴーとバナナと柿を合わせたような、ふんわりと優しい味わい。ほのかに、パッションフルーツのようなトロピカルな香りがします。

村田さん

戦後、食糧のない時代に庭木に植えて、果実をおやつがわりにしていた時代があったみたいです。栄養価が高いんですよ。

天然のカスタードとも言われる幻の果物「ポポー」

お二人の、ポポーとの出合いは?

村田さん

ジャムを作って今年で21年ですが、初期の頃からポポーのジャムを作っていたんです。大分市の吉野に臥龍梅の名所があって、その隣の畑に、変わった果実がなっている木がたくさんあるのを見つけて。それがポポーでした。持ち主の方から果実を譲っていただいてジャムを作ったら、まるでカスタードクリームみたいにトロットした、とてもおいしいジャムができたんです。
4,5年間は収穫に伺っていたのですが、持ち主の方も高齢で「畑に行くのがきつい」とおっしゃっていて。「このままなくすのは忍びない」と思ったので、湯布院の外れの山の中に土地を借りて開墾。栽培を始めたのが2004年でした。種から育てたんですが、栽培方法の記録が残ってなくて苦労しました。

溝邉さん

よくチャレンジしたよね。本当にすごいと思う。
私がポポーに出合ったのは、15,6年前です。地元のデパートの70周年記念企画で、「大分の産品を使って70種類のアイスクリームを作ってほしい」という依頼を受けたのがきっかけでした。その時に作ったもので一番印象に残ったのが、ポポーのアイスクリームだったんです。
ポポーはバイヤーさんが見つけてきたんですが、私もその時に初めて知った果物。そしてポポーをアイスクリームにしたら、ものすごく美味しくて。どなたが食べても、絶賛していたんですよ。またいつか作りたいと思っていたんです。

素材を 活かしたアイスや調味料など多種多様な商品開発を手掛ける『フードスタッフ』溝邉代表

お互いお知り合いの関係だったのに、ポポーのことはご存知なかった んですね。

溝邉さん

そうなんですよ!
一昨年(2019年)から、本格的に「ポポーのアイスをもう一度作りたい!」って思うようになって。東京の展示会でも探していたんです。「ポポーのジャムが手に入ったら、おいしいアイスクリームができるのになぁ」って周囲に言っていたら、たまたまお話をいただいたんですよ。『風曜日』さんが、高島屋さんなどにポポージャムを出していたのは知っていたんですが、大分で商品を見かけたことがなくて。だから、作る量が少ないと思っていたんです。そしたら「畑を作っているんです」って言うから、えええーっ!って(笑)。

村田さん

栽培を始めた頃は実が小さかったんですが、今は接木をして品種改良を重ねて、けっこう大きな実が採れるようになりました。
収穫量は3トンくらい。ポポーは、硬い時期に収穫したものはダメなので、完熟したものだけを選んで、剥いて、種をとって、裏漉ししないといけないんです。

溝邉さん

そう、その作業が大変なんですよね。

自社農 園で育てた果物や旬な素材にこだわったジャムづくりで知られる『湯布院散歩道』村田代表

原料は、最初からジャムにして提供したんですか?

溝邉さん

最初は、皮をむいて種を取ったペースト。それから加糖させてもらって作りました。当社は、かぼすのアイスクリームを作る時、果汁はストレートで使います。そして、カボスの表皮を使ったジャムは自社で作って、それをペースト状のソースにする。そのソースを一緒に混ぜ込むと、皮から香りが出るので香料などを一切使わなくていいんです。小さい皮を噛んだ時に、ふわっと香りが口に広がるのもいいでしょ。なるべく、香料や着色料など、合成のものは使わないようにしています。

村田さん

きっと、フードスタッフさんはペーストの方が作りやすかったと思います。でも加工も加糖もしないペーストでは、うちの品質管理に問題が出てしまう。冷蔵や冷凍の設備がないので、色も変色しちゃうんですよ。その品質管理の関係もあって、うちに合わせていただいて。ジャムでの提供に変えてもらったんです。

溝邉さん

どっちにしろ、加糖は必要ですからね。ジャムの方が製品的には安定しているので、継続的な製造には向いています。色も香りも糖度も、『風曜日』さんはきっちり作って頂いているので。あとは、調合と配合比さえきっちり守れば、安定的なアイスクリームが出来上がります。その基準を作るには何度も試作を重ねて、何段階もの施策が必要でしたが、最終的に「これがいいですね」という商品ができました。

季節の果物を使った完全手作りのジャムは、果肉たっぷりで贅沢な味わい

コラボをする際は、安定的な原料の提供と、品質管理が重要なんです ね。

村田さん

コラボの話ってよくあると思うのですが、ビジネスとして成立するものではないと難しいですよね。例えば、「こんなのがあるから作って」と原料を持ち込んでも、安定的に数量が確保できないと。うちも、ポポーの畑を作ったのは2004年。試行錯誤しながら種から木を育て、収穫量が増えるまでには8年くらいかかりました。木も、歳をとると収穫量が減ります。幼木も育てながら収穫のサイクルを作って、なんとか形になってきた感じですね、だから、コラボのお話ができたのもちょうどいいタイミングだったのかも。でも、来年はもう少し量を増やさないと。

溝邉さん

販売するに当たって、やっぱり原材料が安定的に供給していただける、っていうのがまず第一です。
継続しないと、利益にならないですからね。両者とも、薄利多売だけど、将来を見据えた取引を始めようとしてるんですよね。
でも、ポポーなどの珍しいジャムを作る、しかも栽培からやっているっていうことは、強みになってくるんです。できた果物を加工するって、原石を磨くみたいなものなんですよ。当社は、届いたものをさらに磨いて、お客様に届ける。そこで、お互いの得手、不得手は補って。当社は、「もっとこんなものもできないか」って商品開発をして、売り場も開拓していく。

村田さん

OEMでアイスクリームを作ってもらって、うちが売り出す方法もあるとは思うんですが、僕は売るのは得意じゃない(笑)。冷凍のアイスを扱うのは、発送するのも在庫を持つのも設備が大変です。『フードスタッフ』さんなら、アイスクリーム製造の技術もすごいし、販売もしっかりしていらっしゃる。

溝邉さん

冷凍庫があっても、そこを商品で埋めなきゃいけないっていうのは大変ですよね。当社なら、流通も確立してる。販売する先もある。だから原材料として提供した方が、『風曜日』さんとしてもメリットは大きいと思います。

九州を走るクルーズトレインに提供された希少な「ポポーアイス」

しかも、このポポーアイスはなめらかで作りたてのような味わいですね。

溝邉さん

アイスクリームでも、素材の味をそのまま、ストレートに味わっていただきたいと思っています。それは、大手さんの大量生産商品ではない、高付加価値につながるところだと思います。ポポーアイスは原料も大分県産で、しかも『風曜日』さんが栽培もやっているから、作り手の顔が見える。それは、私たちが卸しや販売するにも、すごく強みになるんですよ。特にポポーは輸入のものが多いので、全然価値が違いますよね。

村田さん

アイスクリームにしたことで、「湯布院にポポーがあるんだよ」っていうことが、もっと知られるようになったら嬉しいですね。

『湯布院散歩道』が運営 するカフェ『風曜日』にて。旬な果物のジャムやコンポート、ジュースが並ぶ

今後は、どんな展開を考えていらっしゃいますか?

溝邉さん

実は今、商品開発をしていまして。ポポーアイスを使ったパフェなんですが、特別な日に食べてもらえるようなギフトになればと思っています。『風曜日』さんがすごく貴重な果実を作ってくれているから。ポポーって、どこにでもあるものじゃないですからね。他にもいろんな果実のジャムがあるから、それをポポーのアイスクリームの間に入れて。「湯布院ブランドのアイスクリームを作ろう」って、企画しているんですよ。

村田さん

うちも、ポポーの畑をがんばらないと(笑)。
当時ほとんど知られていなかった柚子こしょうは“万能調味料”として大きな反響を呼び、デパートやスーパーで飛ぶように売れたといいます。そこから知名度が上がり、大手食品メーカーが商品化に乗り出すなど、柚子こしょうは全国区の調味料になっていったのです。その下地を作った川津食品は、まさに柚子こしょうのパイオニアといっても過言でありません。
現在は柚子こしょうシェア全国No.1の企業へと成長。令和元年には点在する工場で行なっていた業務を一本化するために環境設備を整えた新工場をつくる等、年間150tほどの生産量は増加の一途をたどっています。

お互いの強みを 活かした商品開発ができるのは、食への想いと 信頼関係 があってこそ

  • 有限会社 フードスタッフ

    代表取締役
    代表 溝邉利江さん
    事業内容
    オリジナルソフトクリーム原料及び機械の販売
    オリジナル冷菓(アイスクリーム)オリジナル菓子製造販売
    オリジナルチーズ類の販売
    オリジナルハム、ソーセージ、ベーコンなどの食肉加工の販売
    駄菓子製造販売
    オリジナル調味料製造販売
  • 有限会社 湯布院散歩道(食工房風曜日)

    代表取締役
    代表 村田武さん
    事業内容
    調味料製造業

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