日本最古の香料メーカーの挑戦小川香料おおいた佐伯農場株式会社 [ 大分県佐伯市 ]
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総合香料メーカー小川香料株式会社が独自の取り組み「Sense Japan(日本各地の農林水産物を使った香りの研究・開発、それに伴う地方創生)」の一環として設立した『小川香料おおいた佐伯農場株式会社』。現在は佐伯市の特産品であるマリンレモンの栽培に取り組んでおり、香りを活用した大分県産品の知名度・ブランド力の向上、地域振興を目指しています。
代表取締役 上野 俊輔さん
香りを通じて、日本の農林水産物を世界に発信したい
1893年創業の小川香料株式会社は国内で最も古い香料メーカー。香料に関して国内3位のシェア率を誇り、フレーバー(食品の香り)、フレグランス(食品以外の香り)の研究・開発・製造・販売を一貫して行っていますが、取り組みはそれだけにとどまりません。
「2017年から日本各地の生産者や自治体、企業と連携して日本の農林水産物を原料にした香りを研究・開発する“Sense Japan(センスジャパン)”という活動を行っています。目的は、香りを通じて日本の自然・四季・伝統・文化が育んだ素晴らしい産品の知名度・ブランド力を高め、産地以外、そして世界に発信すること。香りは食品や化粧品、日用品などあらゆる加工品に活用できますから、より多くの人に産品の魅力を伝えるツールになると考えています。この活動が地方経済や農業の活性化、観光振興など地方創生につながることを願っています」そう話すのは『小川香料おおいた佐伯農場株式会社』の代表を務める上野俊輔さん。同社設立のきっかけもSense Japanだったといいます。
『小川香料おおいた佐伯農場株式会社』の代表を務める上野俊輔さん
佐伯市の特産品マリンレモン
マリンレモンとの衝撃的な出会いを経て、農業参入へ
Sense Japanの原料探索担当が大分県を訪れた際、JA全農おおいた(全国農業協同組合連合会大分県本部)の職員に「カボス以外にも良い柑橘類がある」と紹介されたのが佐伯市の特産品マリンレモンでした。「レモンは香料界では王道中の王道。需要も高く、フレーバーでも、フレグランスでもメインを張ることができます。国産レモンといえば瀬戸内という固定概念があったので、初めて聞くマリンレモンに俄然興味を惹かれました。実際に緑色のレモンを手にした時のワクワクした気持ち、口にした時の感動は今もよく覚えています」。当時本社の経営企画部に所属していた上野さん。皮ごと丸齧りしたマリンレモンの鮮烈な香り、ジューシーでパワフルなボディに衝撃を受け、素晴らしい香りになると確信したといいます。
小川香料は元々「原料からこだわって香りを作りたい」「香りの原料を生産する農業の担い手不足解消に貢献したい」等の想いから農業参入を考えており、全てのタイミングが合致した2018年、佐伯市と農業参入協定を締結。佐伯市、大分県南部振興局、JA全農おおおいたの協力を得て、『小川香料おおいた佐伯農場株式会社』を設立しました。
商品化まであと一歩。すでに県内外の企業からお問い合せ多数
荒廃農園の造成からスタートし、2021年に初植栽を実施。現在は約8haの広大な農園で3,500本のマリンレモンを育てています。「香料メーカーとして農業参入は悲願といっても過言ではありません。栽培方法を工夫したり、最も香りが良い時期に収穫したり、とことんこだわることができますから。ただ、私含むスタッフは全員元本社勤務で、農業初心者。ここまで歩みを進めることができたのはJA全農おおいたの職員さんや地元のマリンレモン農家さんなど多く人や団体のご支援、ご協力があってこそ。まだまだ勉強中ですが、自分たちの手で育てたマリンレモンで魅力的な香りを作り、マリンレモンの知名度・ブランド力を高めることが恩返しになると考えています」。
2年間の試験収穫を経て、2024年秋にいよいよ本格的な収穫を予定している佐伯農場のマリンレモン。収穫物は青果出荷用と加工用おおきく2つに分けられ、加工用は搾汁してレモン果汁と搾汁した後の果皮から香料原料の元となる精油を採取します。そこから商品に応じた様々な香りを生み出していくことになるといいます。
すでに県内外の企業から多くのお問い合わせが寄せられており、香りを通じて“佐伯のマリンレモン”が日本全国に認知される日もそう遠くなさそうです。
マリンレモン以外にも多くの大分県産品を活用
小川香料は佐伯市と農業参入協定を締結した翌年、2019年に大分県と「香りに関する連携協定」も締結。第一弾として大分県の特産品である「かぼす」の香料製品・粉末果汁を開発し、大きな話題を呼びました。
他にも大分県が8年の歳月をかけて開発したオリジナルいちご「ベリーツ」、大分県のみで栽培されており、琉球畳の材料として知られる「七島藺」、ワインを発酵させた後に発酵槽の底に溜まる澱(酵母)「ワインリース」、香料として非常に価値の高い「バラ」、漁師まち佐伯ならではの「ブリのアラ」など様々な大分県産品を原料とする香りの研究・開発に取り組んでおり、すでにその香りを使った多くの商品が県内外に流通しています。
小川香料は佐伯市と農業参入協定を締結した翌年、2019年に大分県と「香りに関する連携協定」も締結
「佐伯農場の当面目標は質の良いマリンレモンを育て、収穫量を増やすこと。まだ少量ですが日本では栽培が難しいといわれる柑橘類ベルガモットやブラッドオレンジ、カボスも育てているので、本社と連携しながら様々な香りで大分を元気にするお手伝いができたら嬉しいですね」。最後にはにかんだ笑顔で目標を語ってくれた上野さん。香りの持つ無限の可能性を信じ、これからも走り続けます。
最後にはにかんだ笑顔で目標を語ってくれた代表取締役の上野さん
マリンレモン畑の全景
広大なマリンレモン畑。2024年は10tを収穫予定ですが、2030年の成園期には180tまで増やしたいと意気込んでいます。
農園を管理するのは代表取締役の上野俊輔さん(左)、取締役の辻貴大さん(右)ほか1名。 夏場は朝6時から草刈りや防除に追われます。
小川香料おおいた佐伯農場株式会社
PROFILE
- 設立年月
- 2018年
- 代表取締役
- 上野 俊輔
- 事業内容
- 農産物の生産・販売と農産物を使用した加工品の製造・販売
CONTACT
- 住所
- 大分県佐伯市米水津大字利浦768番地
- TEL
- 070-3547-7159