

森の小さな洋菓子店から地域ブランドの創生を。株式会社ふる里fullsato(洋菓子工房 アンティーク) [ 大分県豊後大野市 ]
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地元産素材を使った商品をはじめ、生産者とのコラボ商品実績多数。自家栽培米の米粉を使ったグルテンフリーの菓子も注目を集めています。商品開発の依頼やOEM・ODM の依頼も増えつつあり、「Think globally,Act locally(広い視野で考え、足もとから行動する)」を経営理念に、洋菓子店の枠を越えた発想を大切にしています。

(左)PR・商品開発 天野由紀さん、(右)オーナーシェフ 甲斐公洋さん
この場所だからできることを。
『洋菓子工房アンティーク』が店を構えるのは、周囲を山や田んぼに囲まれたのどかな場所。森の中の小さな洋菓子店は、地域の人のみならず市・県内外から洋菓子好きが訪れる、ちょっと隠れ家的な店です。
この地域で生まれ育ったオーナーシェフの甲斐公洋さんは、工業系の学校を卒業後に洋菓子の世界へ。「最初は配達からのスタートでした。繁忙期にオーナーから手伝ってと言われたのが製造に携わったきっかけです」。
老舗洋菓子店やホテルでスイーツ担当として修行を積んだ後に独立を考えたとき、父親が地域の憩いの場として建てていた手作りハウスを利用し、地元で洋菓子店『アンティーク』をオープンしたのが2005年。
「本当に作りたいと思える洋菓子を、のんびり、自分のペースで作りたかったんです。お客さんが来ない日があってもいい、くらいの気持ちだったので、今のようにたくさんのお客さんが来てくれているのは、当時から考えると驚きですよ」と甲斐さん。3年前に店舗をリニューアルし、よりたくさんの客が訪れる店になりました。

『洋菓子工房アンティーク』が店を構えるのは、周囲を山や田んぼに囲まれたのどかな場所

森の中の小さな洋菓子店は、地域の人のみならず市・県内外から洋菓子好きが訪れる、ちょっと隠れ家的な店

この地域で生まれ育ったオーナーシェフの甲斐公洋さん

3年前に店舗をリニューアルし、よりたくさんの客が訪れる店に
自家栽培米の米粉を使った、子どもに食べさせたい“心と体にやさしい”スイーツ。
「事業モデルになりたいというと大げさですが、田舎ならではの洋菓子を発信していきたいんです」と甲斐さん。この場所ならではの取り組みのひとつが、米粉を使ったグルテンフリースイーツの製造です。
米農家を営む甲斐さんの父親が作っている低農薬・有機肥料で育てた自家栽培米(ひのひかり)を使い、洋菓子に取り入れたところ好評に。中でも看板商品の『米粉ロール』は、久住高原で平飼いしている『グリーンファーム久住』の新鮮な卵を使ったこだわりの一品です。
また、カラフルでかわいい『VEGEタルト』はほうれん草、ごぼう、紫芋などの大分県産野菜をパウダーにした米粉のチョコタルト。かわいらしい見た目と、野菜の香りや風味を感じられるように工夫を施しました。母親でもある天野さんの「野菜嫌いの子どもにも食べてほしい」という思いが形になった商品でもあります。
さらに、乾しいたけパウダーを使った『ナヴァショコラ』は、なんとシェフのしいたけ嫌いから生まれた洋菓子。きのこ類を表現する方言『なば』をもじった商品で、「しいたけ嫌いな人がどこまでなら耐えられるか、何度も試作を重ねました」と甲斐さんが試行錯誤の末に誕生させた自信作。レンジで温めるとチョコレートソースが溶け出す仕掛けも楽しいケーキで、椎茸の風味とチョコレートの深い甘みが不思議と良く合う一品です。

看板商品の『米粉ロール』

カラフルでかわいい『VEGEタルト』

乾しいたけパウダーを使った『ナヴァショコラ』
情報発信によって、関わる全ての人が笑顔になれる仕組みづくり。
情報発信や新商品開発など、運営を担っている天野由紀さんは、甲斐さんと同じく豊後大野市の出身。野菜ソムリエの資格をもち、大分県6次産業化プランナーとしても活躍しています。
「アンティークのこともよく知っていましたが、こんな田舎で商売するのは難しいだろうな…と思ってました」と天野さん。豊後大野市には若手事業者が多く、普段から事業者同士のつながりも多いことから、情報発信手段を模索していた甲斐さんと、情報発信や商品開発を得意とする天野さんがタッグを組むことに。2021年に運営会社として『株式会社ふる里 full sato』を立ち上げました。天野さんをはじめ女性スタッフからのアイデアを洋菓子に取り入れることが多いそうで、女性や母親視点の商品開発によって、トレンドに敏感な若者の来店も増えているといいます。

情報発信や新商品開発など、運営を担っている天野由紀さん

2021年に運営会社として『株式会社ふる里 full sato』を立ち上げました
生産者と一緒に。洋菓子はあくまでも、地元を盛り上げる“手段”。
店をたくさんの人に知ってもらうための情報発信はもちろんですが、「生産者や地元の人と協働する」という思いが強いお二人。「生産者さんは、廃棄するはずだった農作物が洋菓子になるだけでも喜んでくれます。でも本来は、洋菓子の売り上げに伴って収入が上がったり、他の生産物の売り上げが伸びたりと、生産者さんにもメリットがないと意味がないと思うんです。関わる全ての人が笑顔になるために、洋菓子は手段のひとつにすぎません」と天野さん。素材提供者と製造者という立場ではなく、お互いが開発者として携わることを念頭に、商品開発をしています。
コラボ商品のひとつが、地元酒蔵の酒粕を使った『酒蔵のチーズケーキ』です。純米酒『ゆすらもも』を使ったプレーンタイプと、酒粕で作ったショコラタイプの2種類を販売。
お菓子をきっかけに酒蔵を知り、各店の売り上げアップにつなげることが最終目標です。他にも、さまざまな作り手や生産者とのコラボによって地元を盛り上げるべく奮闘しています。
また、工房にはクッキーの成形機やタルトの成形焼成機など、機械の導入を積極的に行っています。誰でもすぐに即戦力になれる体制を整えることで、子育てや介護をしながら働く人をサポート。雇用の創出によって、「田舎は働く場所がない」というマイナスイメージを払拭しています。生き生きと働ける場づくりへの取り組みも、地方創生に一役買っているといえそうです。

「生産者や地元の人と協働する」という思いが強いお二人

クッキーの成形機

タルトの成形焼成機
廃棄ロスをなくしたい。環境に配慮した循環型スイーツ『サキュレ』を開発。
製造の過程で発生してしまうケーキの切れ端。「もったいない」の精神と、SDGsの観点からも利用価値を模索していました。そこで開発したのが循環型スイーツ『サキュレ』です。
用途がなく捨てられてしまう切れ端をオーブンの予熱で焼いてケーキクラムにし、クッキー生地に混ぜ込んだもので、クッキーサンドとして販売。サクッと軽い食感とやさしい甘さのクリームがマッチする一押しのスイーツです。エシカル消費への高い意識をもつ企業からの注文も多いそうで、地産地消・地域貢献・SDGsなど、気になるキーワードをとらえた商品だともいえます。
「シェフは職人であり、研究者の視点ももっているからこそ、いろんなチャレンジができるんだと思います」と楽しそうに話す天野さん。洋菓子職人と経営者の両方の視点によって、おおいたの魅力発信は続きます。

用途がなく捨てられてしまう切れ端をオーブンの予熱で焼いてケーキクラムに

循環型スイーツ『サキュレ』

株式会社ふる里fullsato(洋菓子工房 アンティーク)
PROFILE
- 設立年月
- 2021年12月
- 代表取締役
- 天野由紀/オーナーシェフ 甲斐公洋
- 事業内容
- 菓子製造・販売
CONTACT
- 住所
- 大分県豊後大野市緒方町天神50番地
- TEL
- 0974-24-4512
- FAX
- 0974-24-4512
- メール
- antique010879@gmail.com
- HP
- https://www.facebook.com/antiqueyougashi/